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※ネタがかなり多めです。合わない方にはかなり合いません。 ※物凄く長いのでゆっくりできる時間があるときにどうぞ ※ドスネタとスレネタ同人ネタ少々、原作キャラ登場、俺設定有 ※ジャンル:虐、性、家、制、環、薬、共、料、ネタ 2008年8月17日 そいつは有り触れた景色に突然現れた。 もう一人の自分ではなく『ゆっくり』が現れた……。 「ただいまー…といっても誰もいないけどな」 俺は自嘲気味に呟くと背中の重荷を玄関に下ろした。 ぱんぱんになり少し広がったリュックの口から色取り取りの本が見える。 いい歳もして彼女の「か」の字もないオタクライフを満喫しているのは世間的に見ると悲しい事だが、大量の同人誌を見ると自然と顔がにやけてしまう。 こういう人生も悪くは無いなと思えてくる。 同人誌の整理も早々に済み、今日も今日とてパソコンをつける。 もちろんチェックするのは「ゆっくりを愛でるスレ」だ。 東方のキャラをモチーフにした1頭身の饅頭のような生物。 「ゆっくりしていってね!!!」というキメ台詞とともに何ともいえない愛くるしい表情をする。 ああ、あのやわらかそうなほっぺをぷにぷにしたい……。 体を洗ってあげて「すっきりー♪」とした顔を見たい……。 軽く口づけをして照れる顔を見たい……。 振動を与えて快楽に溺れた顔を見たい……。 ああ……想像しただけでご飯3杯は軽くいけるな……。 こんなに心酔しているからこそゆっくりを虐めて遊ぶ人が信じられなかった。 「愛でるスレ」を探していていつも目に入る「虐待スレ」。 このスレではゆっくりがどうやって甚振られて殺されると面白いかを日夜研究しているのだ。 そして恐ろしい事にこのスレはかなり高い回転率をほこっている。 気持ち悪い以外の何物でもない。 こんなかわいいものを虐めるなんて人間としておかしい。 きっとここにいるような奴が将来殺人事件を起こしたり、誘拐事件を起こしたりするのだろう。 おお、こわいこわい。 いつもなら華麗にスルーするのだが今日はお気に入りの本を入手できて気分も良かったので戯れに虐めスレを覗いてみることにした。 「…反吐が出るな」 やはり見るべきじゃなかった。 そこでは愛でスレで開発されたドスまりさがいいように改悪されて弄ばれていた。 『信頼のリボンってあるけどあれって手下に襲わせて奪ってるんじゃないのw』 『あっちのドスまりさの方が信頼できるよって裏切られるのも面白いなw』 だめだこいつらはやくなんとかしないと…。 そう思った後の俺の行動は早かった。 荒らそう。 こんなクズのいるスレは荒らしたほうが世の中のため…いや、ゆっくりのためになる。 更新 更新 更新 … …ほらもう食いついてきた さすが弱いもの虐めしか出来ない集団だ。 スレは俺の書き込みから一気にカオスになった。いいざまだ。 ゆっくりを虐めた結果がこれだよ、と俺はお決まりの台詞を一仕事終えたスナイパーのように吐く。 もっと荒らしてやろうと思ったが朝からの遠征に疲れを感じていた俺の身体は徐々にまどろみに襲われていった。 こんな腐った人間と関わる事は今後ないだろう。 墜ちゆく意識の中で俺はそう思っていた。 「………くり……てね」 「こ…ゆ………………るね」 自分しかいないはずの部屋から誰かの声がする 泥棒かと言う考えが頭を一瞬過ぎったが声がおかしい 人間の言葉だがどこか違和感がある 俺はパソコンに向かって突っ伏してた重い身体をゆっくりと後ろへ向けた。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆ~♪ゆ~♪ゆ~♪」 「あまりひろくないけどここはすごくゆっくちできるね~」 「おかあしゃん、れいみゅおにゃかがしゅいたよ~」 「ちんぽー!」 ……どうやら俺の頭もとうとうおかしくなったようだ。真昼の夢じゃないよな? 純潔保持記録がまだ30年になってないのに………しかも見えているのは妖精ではなく、ゆっくりである。 ひい、ふう、みい…ってどれだけいるんだよおい…軽く100匹以上はいるじゃねえかよ…。 種類もれいむ、まりさ、みょん、ちぇん、ぱちゅりー、ありす…捕食種以外はいるようだな。 突然の出来事に戸惑っているうちにゆっくりたちの方から俺に話しかけてきた。 「おじさんはだれ?ゆっくりできるひと??」 「ここはれいみゅたちのおうちだよ!ゆっくちできにゃいひとはでていってね!」 「たべものくれたらとくべつにこのとかいはのおうちでゆっくりさせてあげてもいいわよ!」 「むきゅ~ん、ここはくうきがわるいわ……なんだかいかくさい~」 そうだ…この光景はスレによく投下されてるSSで見たじゃないか。 だったら言う事は一つしかない。決まっている。迷う必要はない。左手はそえるだけ…。 「お兄さんはゆっくりできるひとだよ!君たちの仲間に入れて欲しいな!」 精一杯の笑顔で、はっきりとした声で伝える。 「ゆゆっ!じゃあたべものもってきてね!むのうなひとはゆっくりするしかくはないよ!!!」 「まま~れいみゅあまいおかちがたべたいよ~」 「ゆっくりしないでさっさともってきてね!のろまはきらいだよ!あとかわいいまりさにはおおめにちょうだいね!!!」 やった!仲間に入れてもらえた! まさに天にも昇る気持ちだった。 「よ~し、おじさん張り切って用意するからゆっくりまっててね!」 「ゆゆゆっ!おじさんものわかりがいいね!!!」 「ぶをわきまえてるね!にんげんにしてはかしこいね!!!」 もし俺が虐殺スレのお兄さんだったらこのあたりで1匹は死んでいるだろう。だが俺は愛でスレお兄さんだ。このゆっくりたちはツイている。 夢だと思ってたゆっくりたちが今俺の部屋にいる…普通なら疑問に思うところだが俺はこの異変を快く受け入れる事にした。 さてこの子たちにおいしいお菓子をつくってあげなきゃな、バケツプリンとか喜んでくれそうだぞ。 あとはどうしようかな。V●Pに「ゆっくりが俺の部屋に現れたけど質問とかある?」ってスレ立てるのも面白いな。 絶対あいつらバーボンバーボン言い出すぜ。おっと、夜は一緒にお風呂に入って「すっきり~♪」させないとな。 最後は布団で添い寝とかも…?? あああああああああゆっくりがこんなにいっぱいいるなんて嬉しくて頭がフットーしちゃうよおおおおおおおおおおぉぉぉぉ ホァー!ホァー!んんんん゛ほおおおおおおおおおおおおおおおおおお゛おおおおおお゛おおおおおおおお゛おおっっーーーー!!!!!! 今の俺はヘブン状態だ。 きっと世界一の殺し屋がアサルトライフルでバズーカのように狙撃しているという物凄い間違いをスルーできる自信がある。 これからのゆっくりたちとの生活を妄想駄々漏れしながら俺特製バケツプリンの準備を準備しようと台所へ向かう途中足元のあるものに気が付いた。 「何か破れてる…?これは……!!!!」 そこには変わり果て、紙屑になった厳選の東方エロ同人があった。ゆっくりたちが破いたのだろう。 「ああっ!夢●ごこちさんのけーね本が…こっちは榎宮●さんのうどんげ本が……や●っさん、高●さん、倉●さんの本まで……」 怒りたかった。 すごく怒りたかったが本はまた買えばいいがゆっくりは買えない。 物より思い出=プライスレス。 COOLになれ俺。 …よし、落ち着いた。 だがこれは崩壊への序章に過ぎなかった。 掃除を済まし、おかしの下ごしらえを終わらせ一休みしようとリビングに戻ってきた時であった。 部屋の隅にある小さいテーブルのところでゆっくりが集まってなにやら騒いでいる。 その真ん中で声を荒げて時々飛び跳ねるゆっくりが見える。 「おい、喧嘩はやめろ!仲良くしないとおかしを出さないぞ!」 そう、俺は愛でスレお兄さん。 争いごとは大大大嫌い。 急いでゆっくりたちの群れに割ってはいる。だがそこでは喧嘩は行われていなかった。 「ゆゆゆっ!れいむたちけんかなんかしてないよ!!!」 「そーだよ!れいむたちはなかよしだよ!!!」 「…じゃあ何の騒ぎだったんだ?」 俺はゆっくりたちの真ん中にあった騒ぎの原因らしきものを引っ張り出した。 「…Z●Nさんの音楽CDじゃないか、お前らなんでこれを?」 「ゆゆゆっ!そのえすごくへたくそだよ!きみがわるいよ!!!」 「れいむのほうがもっとうまいえをかけるよ!」 「さっさとしまってちょうだい!とかいはのありすはめがつぶれそうだわ!!!」 「むきゅー」 「すごく……へたくそです……」 今なんかガチホモがいたような気がするが無視する。 「あのな~これはお前らの元ネタの生みの親が描いてるんだぞ。Z●Nさんはこのゲームを一人で制作しててだな、それなのにすごくクオリティの高いゲームを作るしそれどころか音楽に関してはそのままCDで出しても……」 自慢のZ●N絵コレクションをゆっくりたちに見せながら俺は説明を続ける。 「ねえ……これもしかしてこれれいむ?」 「これ…まりさ?」 「わからないーわからないよー?」 「ち、ちーんぽ…?」 「…であるからして絵に関しても左右反転してもずれが少ない、以上のことを踏まえて実は絵に関してもレベルが高いと言えるわけだ。どうだ?生みの親のすごさはゆっくり理解できただろ?」 これでこの子たちもZ●Nさんのすごさがわかるだろう。 二次創作とはいえ元はZ●Nさんの作ったキャラだ。わからないはずがない。 だが俺の淡い期待は軽々と打ち砕かれた。 「れいむこのえきらーい!」 「もっとうまいひとがかくべきだぜ!」 「ぜんぜんとかいはじゃないわ!このえのわたしははいなかものだわ!!!」 「この絵がどう擁護しても下手糞なのはゆっくりが見ても確定的に明らか」 …頭が餡子だからだな。仕方がない。 「…もういちどもっとわかりやすく説明してやるぞ、元々絵に関しては本業じゃないのにこの…」 「こんなのれいむじゃないよ!こんなへたなえかくおやはいらないよ!!!」 「ゆゆ!いらにゃーい!」 「かわいいかわいいまりさをぶさいくにかくひとはゆっくりしないでとっととしんでね!!!」 「わかるよー!いらないよー!」 「ちーんぽ!!!ちーんぽ!!!」 ゆっくりたちからの心無い下手糞コール。 どうしてこんなに非難できるのか。 ゆっくりたちの憧れの人への罵倒に過去の忌まわしい記憶がよみがえる。 まだ俺に創作意欲があった時の記憶。まだ俺が創作活動をしていた時の記憶。 「これなら俺が描いたほうが上手いなwwwww」 「こんな絵で売れると思ってんの?ばかなのしぬの?」 「売り場スペースの無駄遣いだなwwww」 「萌えない絵に価値はないでござる」 人の苦労がわからないのか?批評するのは簡単だけど作るのは難しいんだぞ?俺だって何もしなかったわけじゃない。Z●Nさんに憧れて絵も音楽、そしてプログラムも勉強した。 でもどれも駄目だった。駆けっこで速く走るのは才能だ。じゃあなんで絵や音楽がそうじゃないと言い切れる?どうして絵や音楽は練習すれば上手くなるという希望を持つ? どうして自分だけは他人と違うと思う?それだって才能だろう?…俺には才能なんてなかった。 夢に挑戦した結果がこれだよ。 だからこそ尊敬する…頑張る人を馬鹿にすることだけは許せなかった。 「こんなきもいものはみんなでゆっくりしょぶんしようね!!!」 「とかいはのせいかつにこんなものはふようだわ!」 「ゆゆゆ!みんなでおとすよー!!!」 「ゆっくりちね!ゆっくりちね!」 「ゆっこらせ!!ゆっこらせ!!」 ―ガシャャャァアン― CDが崩れる音で現実に還った 自分の考えが頭の中を駆け巡って目の前の出来事が映らなかった。 ゆっくりたちが押し倒したであろうCDは床に落ち、一部は割れてしまったようだ。 音楽の断末魔は俺の心の中で何かが壊れる音に似ていた。 「…………処刑の時間だ」 数分前の自分からは出てこないような台詞が出てきた。 自分でも驚きだ。 「おじさん!このきもいものさっさとしまつしてね!!それからさっさとおかしちょうだいね!!」 「れいみゅおなかしゅいた~もうまてない~!!!」 「ごめんね~あかちゃんたち。おじさんがぐずなのがいけないんだよ!!!さっさとれいむのあかちゃんをゆっくりさせてあげてね!!!」 「いいとししてどうていのおじさんはおやつよういしたらなわでくびくくってゆっくりしんでね!!!」 「ハァハァまりさ~おじさんいなくなったらいっしょにすっきり~♪しようね~ハァハァ」 俺は近くにいた赤ちゃんゆっくりをみんなに見えるように高だかと摘み上げた。 「ゆゆ~おそらをとんでるみた~い♪」 これからどうなるかも知らないで暢気なもんだ。 「ゆゆ!あかちゃんずるいよ!!れいむもやってね!!!」 「ちがうよ!かわいいまりさがさきだよ!!!」 「すごくゆっくちしてていいな~」 さて、注目を集めたところでそろそろやりますか。俺は息を吸い込み、 「俺のこの手が光って唸る!」 「ゆゆっ?」 突然の大声にゆっくりたちが目を丸くする。 だがこれから何が起こるのか期待しているように俺の手を見ている。 「お前を倒せと輝き叫ぶ!!」 「ゆゆゆっ!?」 まだこの非常事態がわからないらしい。 手に乗った赤ちゃんゆっくりを羨ましそうな目で見ているゆっくりばかりだ。 ゆっくりタイムもこれまでだ。 「ひぃぃぃっっさぁぁぁつ!!!!シャャイニィィィィィィングフィンガァァァァァァァ!!!!!!!」 「ゆぐっぶぶぶぶっっっ!!!!」 赤ちゃんれいむは満足なやられ台詞も言えないまま餡子の雨を降らせる雲と化した。 「れ、れ゛い゛む゛のあ゛がぢゃん゛がああああああああああああああ!!!」 「おじさん!れいむにあやまってね!!すぐにあやまってね!!!」 「そうだよおじさん!ゆっくりばいしょうとしゃざいしてね!!!」 所詮二次創作は二次創作。Z●Nさんの偉大さがわからない屑だった。 今まで二次創作だからってこいつらは好き勝手に暴れてたんだ。 だったら俺も爆竜戦隊並みにあばれあばれあばれまくらせてもらおうじゃないの。 この作品も二次創作(笑)だしな。 とりあえず謝れとうるさいゆっくりたちに対して日本式に謝ってやることにした。 「ごめんなさいっっ!俺が悪かったですっ!!!」 俺は勢い良く膝と手をつき頭を地面に伏せた。 土下座だ。 当然足元にいたゆっくりたちは潰された。 「ま゛だれ゛い゛む゛のあ゛か゛ち゛ゃんがあああああああああああああああ!!」 「ま゛り゛さ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああ!!!」 「ぢ、ぢんぼおおおおおおおお!!!」 「どうした?ほーら、お兄さんは謝罪してるぞ~?」 「おじさん!れいむのあかちゃんがつぶされてるよ!!!」 「ま゛りさ゛あああああ!!へんじじでよま゛りさ゛あああああああああ!!!」 「もうあやまるのはいいからゆっくりしないでそこどいてね!!!」 「へー、お兄さんの土下座を受け入れてもらえないのか~……じゃあこれでどうだっ!」 土下座の状態からそのまま足を伸ばし、両手を前に突き出す。 土下寝だ。 ぶちゅとゆっくりの潰れる不快な音がたくさん聞こえた。 シャツも餡子で汚れてるだろうがどうせこのあと返り血ならぬ返り餡子を浴びまくる予定だからどうでもいい。 ちなみに寝心地はなかなかいい。 饅頭のベットなんて普通は一生に一回も味わえないだろうしな。 「い゛や゛あ゛あ゛あああああああああああああああ!!!!」 「はやくどいてええええええ!!!れいむのいもうとがああああああああ!!!」 「はやくどいてねっ!!!!はやくどいてねっ!!!!」 もうゆっくりすることなど完全に忘れてやがる。 だんだん面白くなってきた。 「なあ許してくれる?許してくれるなら土下寝やめるけど?」 身体をわざとくねらせながら尋ねた。 新たな犠牲者が俺の下で量産されている。 「ゆ゛るずがらあ゛あ゛ああああああああああ!!!ゆ゛るずがらぞごどいでえええええええええええええ!!!!」 「ゆ゛っぐぢやめでええええええええええええええええ!!!」 「はやぐじでええええええええええ!!!れ゛いむ゛のあがぢゃんがじんじゃうううううううううううう!!!」 「ありがとう!おじさんうれしいよ!これからも仲良くしようね!!」 その場をゆっくりと立ち上がり満面の笑みで答えた。 だがそんな俺を無視しゆっくりは下敷きになっていたゆっくりに駆け寄っていた。 「あ゛がぢゃぁぁぁぁんじっがりじでえ゛え゛ええええええええ!!!」 「ゅ…ゆっぐぢ、ぢたかったよぉ…」 「きずはあさいよ!なめてあげるからすぐなおるよ!!」 「い゛だいよ゛おおおお!!あ゛んごがどまらないよおおお!!!」 「まりざあああああああああ!!!めをあげでよおおおおおお!!!い゛っじょにずっぎりするんでしょおおおおおお!!!!」 「ど…どぼじで…ごんなごどに…ぐぶっ…」 おお死屍累々死屍累々。 地獄ってこんな光景かねえ。 「天罰とやらを私が体現すればこうなりますよっと」 思わずそんな台詞も出てしまう。 「ほーら、そんな潰れた子なんてどうでもいいからお兄さんとゆっくりしよーね☆」 キラッ☆とした笑顔でゆっくりに詰め寄る。対するゆっくりたちは田mゲフンゲフン…般若の表情だ。 「うるさいよ!!おじさんのせいであかちゃんがしんだよ!!そんなひととはゆっくりできないよ!!!」 「ゆっくりをころすおじさんなんかとっととしね!!!」 「かえしてね!!!ありすのこいびとのまりさをかえしてね!!!!」 おーおー怒ってる怒ってる。 全然怖くねえ。 「うっせーな、お前らが謝れって言ったから謝ったんだろ?悪いのはお前らじゃん!」 「しらないよ!!!おじさんはゆっくりしないでしね!!!!いますぐしね!!!!」 「あやまってもゆるさないよ!!!おじさんはしね!しね!しね!」 ゆっくりたちが俺に体当たりを始めた。 ぶつかるたびにぱふっと気の抜けるような音がする。 本当に痛くないな。幼稚園児…いや、赤ちゃんすら泣かせられないだろうなこれは。 人間と饅頭との歴然とした力の差を理解できない可哀相な餡子脳がとても哀れに思えたのでわざとやられてみることにした。 「あーれーやーらーれーたー」 どっかの先生みたいなやる気のない台詞とともに俺は床に倒れた。 その時もちろん何匹か潰すのを忘れない。 「ゆゆっ!れいむたちかったよ!!」 「ばかなおじさんだったね!まりさたちにはむかったけっかがこれだよ!!!」 「まりさのかたきとったよ!しんだこもゆっくりやすらかにできるね!!!」 あんな大根演技に本当に騙されてやがる。 それと今倒れて下敷きになったやつのことはどうでもいいのかお前ら。 流石餡子脳。2つの事が考えられないのな。 笑うのを堪えながら死んだふりをしていたら騒ぎの最中避難したゆっくりたちも俺の周りに集まってきた。 「ゆっくちじごくにおちてね!」 ぽこっ ぽこっ 「こいちゅがれいみゅのいもーとをおおお!!よきゅもおおおおお!!」 ぱふっ ぱふっ 「むきゅー!!」 ぽむっ ぽむっ 赤ちゃんや貧弱なぱちゅりー種が俺を取り囲み死体(本当は死んでないけど)に鞭を打ち始めた。 どこまでも最低な饅頭だ。 薄目で見える偉そうに踏ん反り返ってるゆっくりの表情に殺意が沸く。 死んだ振りも飽きた。 俺は手足を激しくバタつかせ起き上がる。 「ゆっ!ぷぎゅっぶちゃ!」 「むきゅんぶぶっ!」 「おおもいぃぃぶべらっ!!」 「ま、まりさだけはたしゅけぶぶぶほおおお!!!」 近くにいたゆっくりどもは俺の餌食だ。 死んだ振りのゲリョスに近づいた結果がクエスト失敗だよ。 こいつらの場合人生…じゃなくて饅頭生の終了だけどな。 勝利の余韻に浸っていたゆっくりたちがやっと俺の復活に気付く。 「ゆゆっ!なにがおこったの!?」 「どおじでえ゛え゛えええええ!!どおじでおじさんいぎでるのおおおおおおおおおおお!!!???」 「あ゛あ゛あ゛ああああああまたれ゛いむのあがぢゃん゛がああああああああああ!!!」 「ま゛りざのがわい゛いあがぢゃんもおおおおおおおお!!!!!」 「ぱちゅりーがああああああああああ!!ぱちゅりーがああああああああああああ!!!」 赤ちゃん死にすぎだろ常考。 守る気がないと言わざるを得ない。 死体に鞭打った結果がこれだよ。 「身を守るために仮死状態になる昆虫がいるが…やれやれ死んだ振りってのも楽じゃないな」 こういう時に使う台詞を覚えている俺も俺だな。 「ゆゆゆ!!だまされたよ!!にんげんのくせになまいきだよ!!!」 「でもこんどこそしね!ゆっくりせずにしね!!!」 「あのよでわびつづけてねおるすてっど!!!」 俺はオルステッドじゃねえよ。 それよりまだ勝つ気でいるらしい。 そろそろ虐殺に入るとしますか。 俺は何もないベルトの上を人差し指で3回押し、構えた。 「ライダー……キック!!」 「ゆぐっ!!!!」 宣言とともに目の前にいたゆっくりを思い切り蹴り飛ばす。 小気味のいい破裂音とともにゆっくりは向こうの壁に美しい餡子色の花を描いた。 突然始まった俺の快進撃にゆっくりたちの動きが止まった。 「てーゐ☆」 「ぶぼっ!!!!」 今度は気の抜ける台詞とともに蹴る。 しかし強く蹴りすぎたのか蹴りが当たった瞬間破裂した。 力加減が難しいな。 ゆっくりは状況を理解してないのかそれとも恐怖心からか知らないが動きが止まったままだ。 せっかくだから歌いながら蹴り飛ばすか 脳内では『FULL FORCE』がかかっていた。 …… 「不可能なんてないはず~総てを手に入れるさ~♪」 「ぐぼぉっ!!!」 最後はゆっくりを空中に抛り上げてカウンターキックで決める。 火花ではなく餡子を飛び散らせゆっくりが破裂する。 最高にハイってやつだ。 かける曲は『覚醒』でも『辛味噌』でも良かったなとどうでもいいことを思う。 とりあえず俺を殺そうとしたお馬鹿なゆっくりは全部蹴り殺した。 さて、残りのゆっくりはどう甚振ってやろうか… そんなことを考えてると変わり身の早さに定評がある一匹のまりさが早速仲間を裏切っていた。 それをきっかけにみんな責任を押し付けながら我先にと逃げ出した。 「まりさはわるくないんだぜ!わるいのはぜんぶれいむなんだぜ!!れいむをすきにしていいからまりさはにげるぜ!!!」 「ゆゆ!れいむはわるくないよ!!まりさだけにげるのはずるいよ!!!」 「むきゅ~んまって~」 だがここは俺の家。しかも俺は帰ってきてから玄関には鍵をかけ窓は閉めたままだ。 人間の生活スペースでゆっくりの隠れることのできる場所など高が知れている。 かくれんぼの開始だ…結果は決まってるがな。 続く このSSに感想を付ける
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~投薬一日目~ 特に大きな変化はない。 周りのゆっくりたちとも普通に遊んでいる。 食欲も旺盛でいたって健康。 ~投薬二日目~ ゆっくりパチュリーに何か教えてもらっていたらしいが、 あまり話をよく聞けていない。集中力が散漫になりつつある。 食欲や運動能力にはまだ影響がないみたいだ。 <メモ> ゆっくりれいむと遊ぶ約束をした ~投薬三日目~ 二日目の約束をすっぽかす。どうやら寝起きが悪いようだ。 心配したゆっくりれいむが巣まで見に来るが、涎までたらして寝ているのを見ると、 怒って帰ってしまう。10分ほど起こそうと声をかけたりゆすったりしていたが、効果なし。 昼過ぎに起きたため、食事の回数は三回から二回に。食欲減退などの症状は無い。 今日は巣の中でぼけーっとしていたので運動能力の減退は不明。 ゆっくりれいむとの約束は結局思い出さなかった。 ~投薬四日目~ 食欲に大きな減退が見られる。いつもの半分しか食べずに食事を終了する。 ゆっくりれいむに約束を破った事を注意され謝罪する。 ゆっくりパチュリーが果物をおすそわけに来たが、食欲がないと断る。 飛び跳ねる高さが若干だが低くなっているようだが、誤差かもしれない。 <追記> 資料と見比べた所、やはり若干跳ねる高さが低くなっている。 これによりゆっくりれいむと同じぐらいの足の速さになる。 ~投薬五日目~ 記憶に著しい障害が発生、友人であるゆっくりれいむやゆっくりパチュリーの事を忘れる。 身体能力も大きく減退。跳ねる事ができなくなる。 食欲も大きく減退し、今日は朝から何も食べていない。 ゆっくりパチュリーが数種類の薬草を食べさせるも症状は回復せず。 ~投薬六日目~ まったく動けなくなり、記憶や言葉をほとんど失う。 「ゆっくりしていってね」としか喋れなくなり、思い出したかのよう「ゆっくりしていってね」と言っている。 ゆっくりれいむから野菜を貰うが、それが何なのか分からないみたいだ。 「たべて」と言われても食べるという行為が分からないようで「ゆっくりしていってね」と返事するだけだ。 ~投薬七日目~ 昼過ぎに死亡を確認。 それまで痛がるような様子もなく六日目と同じ症状だった。 「ご期待に添えましたでしょうか?」 永琳は数枚の写真と報告書、それに何粒かの錠剤を人間に渡す。 「ええ・・・よかった。これでゆっくりたちも苦しまずに済みます」 「すぐに動きを封じる即効性の強いものもありますけど」 永琳が出してきた別の錠剤に人間は嫌な顔をする。 「そんなものを使ってはゆっくりが可哀想です」 「・・・そうですか、それでは私はこれで」 「ええ、ありがとうございました」 永琳が村の外れの畑まで来る。 「こら、お前ら、また人の畑を!!」 「ゆ?ここのやさいはれいむたちがさきにみつけたんだよ」 「忌々しいな、この野郎」 男が鍬を振り上げる。 「やめなさい、この馬鹿者が!!」 しかし、その鍬は振り下ろされる事はなく、さっき大声を出した男に取り上げられる。 「ゆっくりは人間の約束事が分からんのだ。そうイチイチ腹を立てるな!」 大声を出した男はゆっくりれいむ達に優しい言葉をかけ、森に帰させる。 「竹林の女医様にゆっくりが苦しまず死ぬ薬を作ってもらった。今後、酷いゆっくりにはそれを使う。お前もイチイチ目くじらを立てるな」 「俺ががんばって耕した畑の野菜を勝手に取っていって、それは酷くないのかよ!!」 「大根の一本や二本だろ。それぐらい我慢せい。ゆっくり達だって生きているんだ。そう簡単に殺しては可哀想だろ」 村の外で待っていたてゐは物陰からクスクスと笑っている。 永琳はてゐと合流し、迷い竹林を目指す。 「あの村、絶対にゆっくりを殺す気ないね」 「そうかしら?」 「だって、可哀想とか言ってるんだもん」 「でも、あの薬があれば・・・変わるかもしれないわ」 「えー、でも、アレってゆっくりが可哀想だから遅効性になってるんだよね?」 「いいえ、アレは即効性の毒薬よ。実際、二日目の段階で記憶に著しいダメージを与えてるのよ。痛がらないのは『痛い』って事を忘れてるだけ」 「エグーい」 「使用者が納得して効能が同じであればどんな道筋で効く薬でも良いのよ」 しばらくして、この村の近辺のゆっくりはほとんど死滅した。 「可哀想だけど、この薬なら苦しむ事はないからな」 そう言って薬を使い続けた。苦しくないから、苦しくないから、と言って。 by118 このSSに感想を付ける
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いい天気ですねえ。 生い茂る緑。立ち上る入道雲。かしましく鳴く蝉たち。まさに夏真っ盛りといったところでしょうか。木陰の下、水辺にいても、満ちあふれるエネルギーは陰りを見せませんね。おお、暑い暑い。 しかし、あなたも釣りがお好きだとは意外でしたよ。なかなか理解されない趣味ですからねえ、これ。 え、他に誘ってみたんですか? ふぅん、そうですか。 群れの中で釣りに興味があるゆっくりというと、レティ種ですかね? 彼女の釣り好きは有名ですから。ワカサギ釣りのときに氷をぶち破った件は、衆知というか羞恥の出来事になってますし。 しかし、今は夏眠しているはずですよ。無駄足に終わったでしょう。違うのですか? レティじゃなくて。 長? 長を釣りに? 確かに長も休暇ですが、今度の収穫祭でやる演劇の台本を書いているはずですよ。役者との打ち合わせもこっそりやっているようです。何かと物議を醸す、特に参謀辺りが怒り出しそうな内容みたいですね。なんでわざわざ悶着起こすような……今に始まったことじゃないですけど。とにかく、長を誘ったのなら、それこそ無駄足でしたね。 こんな奇特な趣味を持つのは私たちくらいでしょう。それほど変だとは思いませんが、端から見たら時間の無駄でしょうからね。魚を得るのだけが目的なら、飛行種に任せておけば、いくらでもとは言いませんが、鮭くらいは捕ってきますし。 ……あー、いまの洒落は高度でしたか? まあ、あれですよ、単に魚が欲しくて釣りをやっているのなら、全ての釣り人は魚河岸へ向かわなくてはなりません。 そういうのじゃないでしょう、釣りの楽しみというのは。こうやってのんびり過ぎゆく時間に浸ったり、時折やってくる魚との駆け引きに熱くなったりするのがね、いいんです。漁獲の効率とは間逆にある価値観ですよ。手段こそが目的なんです。まあ、釣れるに越したことはありませんけど。 この沼で言うと、そうですね、ブルーギルなんて釣れますよ。幻想郷では珍しいでしょう。 食べてもそれほど美味しい魚ではないんですが、私は嫌いじゃないんですよ。威嚇するとき頬を膨らませるなんて、親近感湧きません? 海外から持ち込まれた魚で、在来種を食い散らかすというのも、野山の生態系を荒らす害獣としてのゆっくりそのものですしね。ええ、そう見る人間は多いのですよ、実際はともかく。 しかし、そんなブルーギルを放流したのは人間なのですがねえ。日本の釣り人が、力強く釣り糸を引くブラックバスやブルーギルを好んだわけです。日本の魚では物足りなかったのでしょうか。何だか角界を連想しますが、そうしてスカウトされた外来種は釣り人の期待に応えて繁殖し、今日も元気に日本の生態系をボロボロにしているのでしょう。 日本の釣り人が「自然を大切にね! キャッチ&リリース!」なんて言うのは、そう考えるとなかなかセンスあるジョークですね。見習いたいものです。 まあ、私たちは釣った魚はすぐに食べてしまいましょう。寄生虫などの耐性はありますよね? この前、カムルチーを生で食べてましたものね。ここは指定区域の外だから、いくらでも捕って、いくらでも食べることができますよ。 あ、釣りは苦手なんですか。ふふっ、そうですか。下手の横好きというやつですね。いやいや、構いませんよ。先ほども言ったように、釣果は問題じゃないんですから。 そうだ、良かったら、私の釣った魚を差し上げましょう。いいんですよ。気っぷの良さには定評がありまして。気前マルと呼んでください。 しかし、こうして沼を眺めていると、いろいろなことが頭に浮かびますねえ。人間には、こういうとき嫌なことばかり思い浮かぶので、音楽を聴いて紛らす事例は多いらしいですけど。あなたはどうです? え、私ですか? うぅん……そうですねぇ、やっぱりあのことでしょうか。 あー、ところで今日は何日でしたっけ? あはは、「時そば」をやるつもりはありませんよ。ただちょっと、ええ。 24日? そうですか……なるほど、思い出すわけです。 いえね、ちょうどこの日だったんですよ、あれがあったのは。「三方一両損」の話です。 私たちの群れにもいますから、ニトリ種のことは知ってますね。水に弱いとされるゆっくりの中でも、珍しく水棲の生態を持つ種です。 ええ、河童に属する性質を持っていると言われますが、あまり相関性はないんじゃないですか。私もカラス天狗の性質を有するとされてますけど、一切の面影がないでしょう? まあ、それはともかく。 目の前にあるこの沼、これよりもっと大きい湖沼にそのニトリたちは住んでました。いえ、「たち」と素直に呼んでいいものかどうか、少し説明が必要ですね。 「クダクラゲ」って知ってます? 知らない? そうですか。まあ幻想郷には海はありませんから仕方ないかもしれませんが、学問は必要ですよ。《無学は神の呪いであり、知識は天に至る翼である》。「ヘンリー六世」の一節です。 え? 「ヘンリー六世」も知らない? いやはや……確かに、太陽が地球の周りを回っていても不都合ありませんけどね。 話を戻しましょう。 クダクラゲは普通のクラゲとは違い、それぞれの個体がくっつき、群体を為す生態で知られています。単純な群れじゃないですよ。つながって、一つの生物のようになっているんです。 それぞれが遊泳、捕獲、消化、防衛に特化した機能を持ち、集団全体を生かすために生きるのです。生殖専門の個体もいるんですよ。「一心同体」を地でいく生物とでも申しましょうか。 ええ、それをやっていたんです。そのニトリ「たち」は。 ゆっくりは基本的に水に弱く、雨にしばらく打たれていただけで溶けて死んでしまう者さえいます。それは致命的な弱点であるのですが、あるニトリ種は水に強いだけでなく、その性質を利点として活かすことができるのです。 あなたは見たことがないでしょう。群れのニトリ種でできる者はまだいませんからね。身体に親水性を持たせ、水中で粘液状に広がるのです。 九割以上が水分で、半透明。とはいえ、それは紛れもなくニトリの身体であり、自在に動かせます。しかも意識的な変異もできる。顔だけお化けのくせに、複数の腕を生じさせた例もあります。「ニチョリ化」と呼ばれる能力ですね。 水が豊富になければできないことですが、逆に言えば水中においては無敵の力です。 その能力をさらに発展・応用して、彼女らはクダクラゲのごとく一体化しました。自在に身体を変形させる能力で、互いの身体を融合させることを考えつき、実行したのです。 水面を通して、ニトリたちが大樹と連なっているのは壮観でした。節くれ立った巨大な幹が、ほの暗い湖底へと続いており、思い思いに幹から伸びる枝は、ゆらゆらと不気味に蠢いているのです。その全ての部位ににやけ顔が無数に張り付いていました。青みがかった半透明の身体に、屈折した日の光が透過して……。 繁栄を妨げる者はいませんでした。それまでは魚や鳥が天敵でしたが、その状態になってからは、むしろ餌としていました。上空を飛ぶ鳥に向かって、水中から天高く触手を伸ばし、沼へと引き込むというのは、まさに「烏賊」という漢字がしっくりくる光景でしたね。それとも「飛ぶ鳥を落とす勢い」の方が適切でしょうか。 その沼は河童ゆっくりのユートピアだったかもしれません。ただ、あまりにも閉じた世界だった。彼女らはその沼地から少しも外に出ようとしなかったのです。そして、新しい種を取り入れようとしなかった。 常時水の中にいられるゆっくりは、ニトリ種をのぞけばスワコ種くらいのものですからね、彼女らの生き方に合わせられるゆっくりは確かにいません。しかし、それなら自分たちの生き方を周りに合わせる手段もあったはずです。陸上生活と水中生活に分かれ、ニトリ種だけは沼で結合して生きるとか、あるいは時間を掛けて耐水性を獲得させて、それから群体へと引き込むとか。でも、しなかった。 完全に一つの群体となる前は、沼の中だけで生殖していたようです。近親婚ですね。群体となってからは、分裂タイプの生殖で増えていきました。増える分には、それで問題ないわけです。 しかし、遺伝的にも文化的にも、新たなものを取り入れない閉塞は、必ず破綻へと向かっていきます。 まず食糧が足りなくなりました。目に付くものを際限なく食べていれば、当然そうなります。このままではまずいと反対意見を言う者がいませんでしたから、ただただ食べ続けたのです。沼はからっぽになりました。蛙の声さえ聞こえない、静寂の湖沼となりました。 それで、今度は川へと進出しました。そこにはまだ食べ物がありましたからね。しかし、餌を求めて山の外、森の領外にまで行ってしまいました。そう、人間と接触してしまったのです。 彼女らは人を恐れませんでした。実際、水の中の河童饅頭に対し、人間は何もできませんでした。動きは素早いし、たとえモリが当たったとしても千切れた身体はすぐに融合・再生してしまいます。「ニチョリ化」したニトリは、ほとんどアメーバみたいなものですから。それに、群体から見ればモリの一撃などかすり傷に等しい。 やりたい放題でしたね。釣り針に掛かった魚を横取りしたり、仕掛けの位置を動かして自分たちの物として使ったり、川遊びをする子どもたちのお尻に手を入れたり。 村人の怒りは相当のものでした。もともとゆっくりに対して、侮蔑的な感情を持っていましたからね。まあ、好印象を持つ人の方が少ないのでしょうけど、その村は筋金入りでしたよ。 村に入ってきた饅頭妖怪は問答無用で駆除。畑荒らしであろうと迷い子であろうとお構いなしです。視界に入ったら、とにかく虐殺。そして、死んだ饅頭は一口も食べずに埋めるという徹底ぶり。スタンダール風に言えば、「見た、殺した、捨てた」ですね。 かつて集団レイパーアリスに村を荒らされたことが、その異常なまでの嫌悪感の遠因らしいのですが、詳しいことは知りません。ゆっくりは人間に近しい妖怪ですが、その村の付近には一匹もいませんでしたねえ。 さて、そんな村人に対して、ニトリたちはさらに図に乗った行為を始めました。畑を荒らしたのです。 細長くした身体で用水路を通って、そこから陸地に触手を伸ばし、畑の農作物を盗むのです。村の畑の至る所が、粘液にまみれ、穴だらけになりました。 被害は甚大、怒りは心頭。では、村人はいかに? 何をしたと思います? 答えは「毒」。沼に大量の毒を流したのです。 川や用水路にまで進出したとはいえ、ニトリたちの本拠地は元いた湖沼でした。眠るときは必ずそこで、大樹のように一塊になっていましたから、そこを狙ったのです。 効果はてきめんでしたね。彼女らは苦しみ悶え、逃れようとした。しかし、沼の周囲から一斉に取り囲むように毒を流し込んだので、気づいたときにはもう遅く、連なる身体をのたうち回らせるしかできませんでした。その身体も、どんどん融解・崩壊していきました。 ゆっくりは個体によってさまざまな特徴があります。同じ種であっても、その性質に大きな差があったりする。毒への耐性も同じです。しかし、ニトリ種は分裂タイプで増えたため、その毒に対してまったく非力だった。耐性を取り入れることができなかった。全滅するしかなかったのです。 凄惨な光景でしたね。この世のものとは思えない様相……陳腐な表現かもしれませんが、他に適当な言葉が思いつきません。わずかに残った魚や蛙が腹を向けて浮いていたのもそうでしたが、何よりニトリ種の悲惨さは筆舌に尽くしがたいものがありまして。 断末魔の形に開いた口からは舌が垂れ、目は飛び出さんばかりに見開かれて苦悶の色を表していました。顔はこれ以上ないというくらい歪みきり、それら全体が溶けて破れた皮膚から漏れた体液と混じり、ぐしゃぐしゃに潰れているのです。無数に連なる全ての顔が、そのように地獄を映していました。 こうして沼のニトリ種は全滅しました──今日この日、7月24日の出来事です。 ニトリ種が破滅したのは必然だと言えるでしょう。 力があるからといって、全てが可能になるわけではありません。そして、敵を作ることは災厄を抱え込むことと同義なのです。 あなたも気をつけてください。「無知は罪」とまでは言いませんが、死ぬ理由としては十分ですから。「跳ぶ前に見ろ」というイギリスのことわざもあります。 話、続けていいですか? ええ、まだ続くんです。 ほら、この話は「三方一両損」でしょう。まだ「一方」だけですから。 湖沼に毒を流されて、「損」をしたのはニトリたちだけではありませんでした。山の神です。 普段は大人しい神さまで、百年以上は人前に姿を現さなかったのですが、流石に自分の足もとを毒まみれにされてはね。黙ってはいられないでしょう。 とてつもない「損」をもたらした不届きな村人。彼らに対し山の神は怒りを示しました。 大地を揺らし、地面を割り、山を崩し、岩を放る。口で言うと大したことがないように思えますが、自然災害の恐ろしさはあなたもよく知っているでしょう? そのレベルですから。 家は地震で崩れましたし、田畑は地割れで壊れました。山の幸は一切採ることはできなくなり、飛んでくる大岩に潰される者もいました。これが村人にとっての「損」です。ゆっくりに受けた被害の比でないので、先ほどは「損」とはしなかったのですよ。 さて、これでゆっくり・神・人間の「三方一両損」になるわけですね。ちょっと規模が大きい「一両」かもですが、看板に偽りなく、羊頭狗肉にならずに話を終えることができました。はい、どっとはらい。 おや、何か言いたげですね。何です? ああ、そうですね。私たちの群れがこの話に出てこないのは不自然です。 いや、もちろん関わってますよ。見ていたように語っていたのは、実際見ていたからです。私たちの群れは何度も移住をするでしょう? 以前の移住地の話なんですよ、これは。 ニトリたちの沼にはすぐ交渉しにいきました。同じゆっくり同士仲良くやりたいですし、たぐいまれな能力を有してますから群れに引き込めればもっと良かった。 長と私、そして護衛のチェン種とヨウム種が一体ずつ、計四人で行きまして。──すぐに追い払われました。とりつく島もないとはあのことです。言葉を交わしたのは、実質どれほどもありませんでしたよ。 大きな触手が何本も、蛇のようにうねりつつ襲ってきましてね、命からがら逃げてきました。お土産に数々の罵倒や揶揄の言葉もいただいて、いやあ、あれは本当に不愉快でした。おお、不快不快。 不愉快といえば、その後日もですね。大きなイノシシを仕留めた狩猟班が、その湖沼の近くを通った際、獲物を強奪されましたっけ。やはり触手が水面から飛び出してきまして。ヨウムたち狩猟班は素早く逃げ、事無きを得ましたが、獲物はまんまと奪われてしまいました。 その様子を物陰から眺めていたのですが、百キロを超えるイノシシが木の実でもたぐられるように軽々と宙を舞うのは、あまりのパワーに肝が冷えましたよ。 いや、その後の光景はもっと心胆を底冷えさせました。 イノシシがニトリの大木の幹にあたる部分に取り込まれてから、半透明の身体を通して、その消化される様が眼前で展開されたのです。 イノシシはゆったり回っていました。頭を上にして、くるっくるっと横に回転していました。そうして、どんどん姿形を変貌させていきました。 皮が溶け、黄色の脂肪が現れたかと思うと、鮮やかな桃色の筋肉が露出し、漏れ出す赤黒い血は霧散して、色とりどりの臓物が現れ……全てが溶け、太い胴体の獣は、瞬く間に白骨と化してしまいました。強力な同化作用です。その骨も、枯れ木のように折られ、砕かれ、そして溶かされて、跡形もなくなりました。 仮にですよ、私たちが交渉にいったとき、もしも、あの触手に捕まっていたとしたら……おお、怖い怖い。狩猟班も危機一髪でした。 後日、当然抗議しにいきまして、そしてやっぱり追い返されました。初めて交渉しにいったときのメンバーだったのも、デジャヴを感じましたね。やれやれです。 ええ、言いたいことはわかりますよ。 我々が率先して「損」をしている。つまり、「四方一両損」の方が表題としてふさわしいと。そういうことでしょう? まあ、その先を聞いてください。 自分の湖沼を毒まみれにされて、山の神はお怒りでした。 村人に毒を取り除けば許してやろうと言ったのですが、彼らにはどうすることもできませんでした。もともと河童饅頭を殺すことしか頭にはなかったのですから、その後のことなんてね。で、私たちの出番というわけです。 毒を吸収するメディスン種の能力を活用しつつ、中和剤を空中から散布しました。すると、なんということでしょう、瞬く間に湖沼は元の無毒の状態に澄み渡りました。匠の技です。 山の神はそれはもう大喜びでしたよ。こちらまで嬉しくなりましたね。 丁寧なお礼をいただき、そのうえ手厚くもてなされました。 あんなにたくさんの桃を食べたのは、産まれて初めてでしたねえ。ふふ、好きなもので、つい食べ過ぎてしまったんです。なにしろ山積みの果物です。食べ放題の食い倒れでした。驚いたことに、その中にはメロンなんてのもありましたよ。 はい? ……うんうん……おお、すごいすごい。 先ほどの疑問といい、あなたはなかなか洞察力がありますね。単純な知識量以上のものを持っています。 そうですよね。ずいぶんと都合のいい話です。 山の神にできなかった、そして作った村人にさえ無理だった毒の除去。なぜ横からポッと出の我々が、あれほど容易くやってのけられたのでしょうか。 種を明かせば簡単なことです。あの毒はですね、除去を前提として開発されたのですよ。何もしなければしつこく残留しますが、ちょっとしたコツですぐ取り除けるのです。そう、私たちが開発しました。 作ったのは村人ですよ。私たちから製法を聞き出してね。 どうか毒の作り方を教えてください、と頼んだわけじゃありません。さっさと教えやがれ!と脅したわけでもありません。そもそも、私たちが毒の製法を知っているなんて、彼らがどうしてわかるんです? 要は、たまたま聞きつけたんですよね。ゆっくりたちが毒についておしゃべりしているのを。それでそのまま物陰で一切を心に刻みつけたというわけです。陰に耳あり。 そのときのチェン種とラン種は、こんなことを言っていました。 〈さいきん、ぬまのにとりたちがとってもすごいらしいわ!〉 〈つよいんだね、わかるよー〉 〈にんげんなんかめじゃないらしいわよ。ひとひねりだって〉 〈にんげんさんがよわいのかもねー〉 〈むきゅ、そうかもしれないわね! だってなんにもてだしできないんだから!〉 〈ごたいまんぞくなのに、てもあしもでないんだね、わからないよー〉 〈ぐずなにんげんね!〉 〈だめなにんげんさんだね!〉 〈むっきゃっきゃっきゃっきゃっ〉 〈あっひゃっひゃっひゃっひゃっ〉 失礼。毒の製法が話題に出てくるのは、このだいぶ後です。 でも、なかなかの演技でしょう。さすがは「劇団シキ」の役者だと思いませんか。あ、私の口真似も上手かった? ありがとうございます。 ラン種の演じた役柄は参謀を参考にしたとのことですが、ええ、お察しのとおり、黒ゆっくりプロデュースです。 本人に発覚する前に、長は稀少種獲得の旅に出ましたがね。ホントにあの人のイタズラ好きには困ったものですよ。わざと参謀に内容を流す苦労を少しは理解してほしいです。いや、喜んでやりましたけど。 ともかく、この二匹の会話によって、村人は目的意識と手段の両方を手にいれました。このままコケにされてたまるか。毒を流しさえすれば殺せる。やれるのにやらなかったら、人間のコケンに関わる。あの沼のゆっくりに目に物見せてやる。 そして彼らは実行しました。山の神のことなんか考えもしないでね。 マンドレイクって知ってます? 魔法薬の材料などでポピュラーな植物なのですが、これを持ち帰るのが一苦労でしてね。引き抜くと恐ろしい悲鳴を上げて、それを聞いた者は死に至るのです。 では、どうするかというと、定番の方法として犬に引かせるやり方がありますね。自分は声の届かない遠くに離れていて、犬に合図を送る。当然、犬は死んでしまいますが、お目当ての物は手に入ると。 つまりは、まあ、そういうことです。 ニトリたちとの交渉も、行ったメンバーは群れの中でも素早さに優れる者たちでした。なぜ参謀でなく私が行ったのか、わかりますか。また、なぜ交渉決裂後に、狩猟班は湖沼の傍をわざわざ通ったのか、わかりますかね。 相手を敵と認識するため……。大義名分を得るため……。皆殺しの動機づけのため……。 共存できたはずなのですがね。仕方ありません。選んだのは、相手です。 さて、エピローグを語りましょうか。 私たちは湖沼を自由に使えることになりました。ニトリ種に食い荒らされ、毒で汚染された沼。その水産資源が元に戻るにはそれなりの時間と手間が掛かりましたが、山の神の手助けもあって、新しい年を迎えるころには良質の魚がたくさん手に入るようになりました。 山の神の庇護のお陰で、冬の食糧不足が一切なくなったのも良かったですね。山の隅々までご存じなだけあって、あなたこなたから色々な食べ物を持ってきてくれるのです。 寄りかかりっぱなしというわけにもいかないので、できるだけ自分たちの手で獲得し、労働に合わせた厳正な分配は維持しましたが、参謀が冬場の食糧について頭を悩ませない姿は、あのときくらいしか拝めませんでしたね。 村人との交易もなかなか有益でした。村人は山への立ち入りは禁止されていましたからね、山の幸は私たちが採って、彼らと物々交換したのです。 村人がゆっくりと交渉するのは変ですか? ウジ虫のごとく忌み嫌うゆっくりと対等なやり取りをするくらいなら、山菜やキノコなんて要らないと言うに決まっている? まあ、そうでしょうね。 しかし、私たちのバックには山の神がいますから。無下にすることは、そのまま災害が襲いかかることを意味します。 命とプライドを天秤に掛け、村人がどちらを選んだか──それはもう、彼らは聡明でしたよ。今、群れにあるたくさんの鉄器類は、そのとき手に入れたものです。 で、話を戻しますよ。 この話の表題ですが、やっぱり「三方一両損」で良いのです。 その三両は私たちの懐に入ったわけですから。 ね? まだ、言いたいことがあるのですか? この上何を……ふむふむ……おおっ! あははは、なるほど、素晴らしい。センスありますねえ。 そのタイトルの方がいいかもしれません。ダブルミーニングとは恐れいりました。 「両得」ですか。 ふふっ、今度からはそれを使わせてもらいましょうかね。「りょ・う・と・く」。うぅん、返す返す味がありますねえ。 いやいや、やはり大したものですよ、あなたは。才能の片鱗を見た思いです。原石がこんな身近に転がっているとはね。 よろしければ、私の傍で働いてみませんか? 少なくとも退屈しない毎日はお約束しますよ。答えは急ぎませんから、考えておいてください。 ところで──やっとわかりましたよ、あなたがなぜ長を釣りに誘ったのか。 恐らくどこかで、長は釣り好きだと耳にしたんでしょう。 まあ、間違ってはいませんけれども……長が好きなのは、そっちの釣りでなくてですねぇ… ぁ、引いてますよ、魚。 黒ゆっくり6 過去作 fuku2894.txt黒ゆっくり1 fuku3225.txt黒ゆっくり2 fuku4178.txt黒ゆっくり3 fuku4344.txt黒ゆっくり4 fuku5348.txt黒ゆっくり5 fuku5493.txtうやむや有象無象
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「じゃおおおおおおん!!」 怪獣のような雄たけびが森に響く。 声の主はゆっくりめーりん。知能はあまり無いが、皮が分厚く耐久力は凄まじく高いゆっくりだ。 そして今のようなじゃおおおんという言葉(?)しか話せないため他のゆっくりから苛められる存在である。 「じゃおおおおおん!」 再び声を上げるめーりん。良く聞けばその声は悲しみの色を含んでいることがわかる。 そう、このめーりんも他のゆっくりに苛められている真っ最中なのだ。 彼女を取り囲むのはゆっくりれいむとまりさ、そしてありすだった。 れいむ達三匹はこの辺りでは誰も適うゆっくりがいないほど力の強いゆっくりだ。それ故いつも好き放題している。 めーりんの後ろには大きな木が道を塞いでおり、逃げ場はない。 特に珍しくもない光景である。 「ゆっ! やっぱりめーりんをいじめるのはたのしいね!」 「『じゃおおおおん』だって! いつきいてもへんななきごえだね!」 「いなかもののめーりんはとかいはのわたしたちにあそんでもらえるだけでもかんしゃすることね!」 それぞれ好き勝手なことを言い、めーりんに体当たりしたり石を投げたりしている。 皮の厚さのおかげで致命傷には程遠いものの、めーりんの体はボロボロだ。 その目には涙が浮かんでいる。 何故自分はいつも苛められるのだろう。何もしていないのに、ただゆっくりしているだけなのに。 「じゃ…じゃおおおん!」 「ゆっ! こいつないてるよ! きもちわるいね!」 「めーりんのくせになまいきだね!」 再び石をぶつけようとれいむ達は近くにあった手頃なそれを口に銜える。 めーりんは襲い来るであろう痛みへの恐怖から思わず目を閉じた。 そして。 「待ていッ!!」 耳をつんざくような自分たち以外の大きな声。突然聞こえたそれに四匹は動揺する。 だが辺りを見回してもこの周辺には自分たちしかいない。 「ゆっ!? だれなの!」 「かくれてないででてきなさい! このいなかもの!」 だがそんなれいむ達の言葉を無視して謎の声は続ける。 「愚かなるゆっくりどもよ…、森の声を聞け! 風の声を聞け! 弱き者を虐める貴様らの心を嘲笑っているぞ!」 そして大きな影がめーりんを守るように三匹の前に天から舞い降りた。正確には木の上から飛び降りてきた、のだが。 現われたのは妙な姿をした生き物だった。いや、形を見れば人間だとわかる。それは間違いない。 だがそれは顔に変な――少なくともゆっくり達はそう思った――顔の上半分を覆う仮面を被り、大きなマントをはおっているが背負っている籠のせいでマントは風になびかずにいる。 そしてその肩には小さなゆっくりぱちゅりーがちょこんと乗っていた。 呆然とする四匹を気にせず、突然現れたそれは声高々に名乗りを上げた。 「ゆっくり仮面! ただいま参上!」 「むきゅ。説明しよう、ゆっくり仮面は弱きを助け強きを挫く正義のヒーローである」 バーン、と決めポーズをとるゆっくり仮面(自称)と解説役のぱちゅりー。 相変わらずゆっくり四匹は呆気にとられたまま声も出せない。 そんなゆっくり達を無視してゆっくり仮面は続ける。 「哀れなるゆっくり共よ、貴様らのそのゆっくりできぬ腐った根性、叩き直してくれよう!」 今までの出来事を処理できず、フリーズしていた餡子脳がここで再び動き出す。 とりあえず目の前の変な格好をした人間が何物かはわからないが自分達が馬鹿にされたことはわかる。 そういうことには敏感に反応する餡子脳であった。 「ゆっ! よくわからないけど、れいむたちをばかにするおじさんはゆっくりしんでね!」 「そうだね! ゆっくりしね!」 「きっといなかもののばかだからありすたちのおそろしさをしらないのよ!」 次々と罵倒を浴びせる三匹。だがゆっくり仮面はどこ吹く風、腕組みをして余裕しゃくしゃくだ。 「ふはははは、やはり臆病な悪党だな。私が恐ろしくて言葉でしか攻撃できないのだろう!」 見え見えの挑発。だが単純な餡子脳には効果は抜群だった。 そんな態度にゆっくり達が怒り始める。 「ゆぅぅ! もうおこったよ! おじさんはゆっくりしね!」 と、まりさがゆっくり仮面に突撃する。 勢いよくゆっくり仮面の足元へと体当たりするまりさ。しかしそこは人間とゆっくり、圧倒的な力の差は崩せない。 自分の攻撃が全くダメージを与えられていないことにさらに憤るまりさ。 何度も何度も体当たりをするが、ゆっくり仮面は全然動じない。 どれぐらい繰り返しただろうか、まりさの顔に疲れが見え始めた。 「まりさ! がんばって! もうすぐやっつけれるよ!」 「とかいはのまりさのこうげきをうけてへいきなわけないわ! あいてはやせがまんしてるだけよ!」 本気でそう信じ切っている友達の声援を受け、まりさは自分の体から元気が溢れ出てくるのを感じた。 そうだ、攻撃が効いてないわけない。もう一息だ。 まりさはそう信じ、全速力でゆっくり仮面に向かって突進する。 「ふむ。いいか、悪のゆっくりよ。攻撃とはこういうものだ…ゆっくりキックは破壊力!」 と、ゆっくり仮面は勢いよく突っ込んできたまりさの顔面に蹴りをぶしかました。 「ゆ゛ぶう゛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!??」 綺麗な放物線を描いて飛んでいくまりさ。しばらく飛び、その延長線上にあった木にぶつかって地面に落ちる。 仰向けに倒れたまりさの口からは餡子が漏れ出していた。 白目を剥いているが、体はピクピクと痙攣しているので気絶しているだけだろう。 「ま゛り゛ざあ゛あぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「どうしでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」 さっきまではにやにや笑っていた二匹が泣きながらまりさに駆け寄る。 二匹が何度も呼びかけるがまりさの意識が戻る気配はない。 「ゆ゛うぅぅ!! ありす! まりさをみててあげてね! れいむがかたきをとってくるよ!」 「きをつけてね! あいつ、いなかものだけどあなどれないわ!」 れいむは振り返り、ゆっくり仮面を睨みつける。絶対に許さない、と。 そしてれいむは駆ける。友のため、そして貶された自分のプライドのため、あの人間を倒すと心に決めて。 勢いよく走るれいむがある地点でジャンプした。 足は危険と判断したのだろう、上半身に攻撃するための全力での跳躍。 「ゆっくりしんでね!」 「今のを見てもまだ力の差が理解できぬか…。所詮は脳なしの腐れ饅頭だな」 再び馬鹿にされ、鬼のような顔で怒るれいむ。 だがそんな悪口を言えるのもここまでだ、自分の全力の体当たりでゆっくりしね!と彼女が思った瞬間。 「ゆっくりチョップはパンチ力!」 「ゆ゛べっ!」 垂直に手刀を放つゆっくり仮面。それは迫ってくるれいむの脳天に直撃した。 べちゃっ、という音と共に顔面から地面に叩きつけられるれいむ。 皮が破れ、少量の餡子が飛び出したが命に関わるほどではないようだ。 まりさと同じく気絶しているだけであろう。 「ああ゛…ああ゛あ゛゛あ…」 ありすは恐怖した。まさかあの二人がやられるなんて。 そんなありすにゆっくり仮面ははゆっくりと近づいていく。 ありすの前で立ち止まり、自称正義のヒーローは静かに問う。 「さて、どうする? 君も私と戦ってみるかね?」 そんな選択肢はありすには無かった。三人の中で一番弱い自分が適うはずはない。 ではどうするか。 逃げる? そんなこと出来る筈がない。 他のゆっくりならまだしも、れいむとまりさは幼い頃からずっと一緒に育ってきた親友だった。 そんな二人を見捨てて逃げるくらいなら死んだ方がマシだ。 ならば――。 「お゛じざん、ごめんなざいぃぃぃぃぃ。あり゛ずがわるがっだでずぅぅぅぅぅぅ!!」 ありすは泣いて謝った。 こうやって反省したふりをすれば許してくれるかも知れないと考えたから。 以前三匹が人間の畑を荒らした時も、泣いて謝ったら許してもらえたという経験があったからこその判断。 もっとも、その畑の主が虐待お兄さんではなく善良なおじさんだったからなのだが。 都会派の自分としては情けないが命には代えられない、とありすは思う。 「ふむ、なるほど。君は反省しているわけだね?」 「そうですぅぅぅぅぅ!! も゛うこれがらはめ゛ーりんをい゛じめたりじまぜんんんんんん!!」 「うん、それはいい心がけだね」 ゆっくり仮面の露出した口元が微笑む。それを見てありすは心の中でほくそ笑んだ。 ほら、やっぱり人間は馬鹿だ。簡単に騙される。 とりあえずこの田舎者がどこかに行ったられいむとまりさの手当てをしよう。 めーりん苛めだってやめるものか。今日の腹いせに今度は思いっきり三人で苛めてやる。 そんな事をありすが考えていると、急に頭を掴まれた。 ゆっくり仮面は右手でありすを持ち上げ、一気に力を加える。 「い゛い゛いだぁぁぁぁい゛!! どうじででぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 突然の痛みに戸惑うありす。この馬鹿な人間は許してくれたはずなのに。 さらにゆっくり仮面は掴む力を上げ、指がありすの皮に食い込んだ。 演技ではなく本気で顔を歪めるありす。そのとかいは(笑)の顔は涙や鼻水でぐしょぐしょになっている。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁぁぁ!!! あ゛り゛ずのあ゛だま゛がぁぁぁぁぁぁ!! い゛だい゛ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 「反省した? 馬鹿を言っちゃいけない。貴様らのようなゆっくりがこの程度で反省するわけがなかろう」 「あ゛あ゛あ゛あぁぁぁ!! ぼんどうでずぅぅ!! だがらゆるじでぇぇぇぇぇぇ!!!」 ゆっくり仮面はそのまま左手で気絶しているまりさを掴んだ。 元の場所へと戻り、置いていた籠に二匹を詰め込む。 さらにその上からこれまた気絶しているれいむを押し込んだ。 「とかいはのありすはこんなところじゃゆっくりできないわ!」 もう元気を取り戻したのか、抗議してくるありすを無視してゆっくり仮面は未だ状況が理解できていないめーりんに近づいた。 ビクッ、とその体をめーりんは震わす。もしかしたら自分も酷いことをされるのかもしれない。 ゆっくり仮面はめーりんの前でしゃがみ、手を大きく振り上げ…めーりんの頭を優しく撫でた。それと同時に肩に乗っていたちびぱちゅりーが地面に飛び降り、めーりんを周りから観察し始める。 「じゃ…じゃおおおん?」 最初は怯えていためーりんだが、相手が自分に危害を加える気がないとわかると笑顔が浮かぶ。 そしてゆっくりと理解した。この人は自分を助けてくれたのだということを。 無邪気に笑うめーりんにつられてゆっくり仮面も微笑む。 それは先程のありすのときに見せた作り笑いなどではなく、心の底から湧き出た本物の優しい笑みだった。 「ぱちぇ、めーりん君の様子はどうだ?」 「問題ないわ、皮の表面が破れてるだけ。命に別状はないわ」 てきぱきと動くちびぱちゅりーの言葉にゆっくり仮面は安堵の息を吐く。 この解説役兼マスコットのちびぱちゅりーは知識が豊富でゆっくりに関する医術も少々心得ていた。 と言ってもゆっくりは食べ物なので医術もクソもこれといってないのだが。 「よし、ではこれを使おう」 と、ゆっくり仮面はポケットからあるものを取り出した。 「むきゅ。説明しよう、これは『ゆっくり傷薬』。その名の通り、傷ついたゆっくりを癒すゆっくり仮面七つ道具の一つである」 ちびぱちゅりーの解説に頷きながら、ゆっくり仮面は傷薬をめーりんの患部に塗っていく。 傷口がしみるのか最初は嫌がっていためーりんだが、次第にゆっくりし始めた。 この傷薬から発せられる匂いにはゆっくりを落ち着かせる効果もあるのだ。 「ちなみに加工場製の税込315円よ」 「余計な事は言わんでよろしい」 薬を塗り終え、ゆっくり仮面は立ち上がる。 「よし、ではそろそろ行くか」 ありすの喚き声が聞こえる籠を背負い、ちびぱちゅりーを肩に乗せる。 ちびぱちゅりーがちゃんと捕まっているのを確認したゆっくり仮面は再びしゃがみ、めーりんの頭を右手で優しく包んだ。 「めーりん君、これからも辛いことがあるかもしれない。だがそんな時は今日のことを思い出してほしい。君は一人じゃない、君にはこのゆっくり仮面がついている。 それに私だけではない、他の人もきっと助けてくれるだろう。だからいつでも笑っていてくれ。 なぜなら、正義とは常にポジティブなものなのだから!」 グッ!と左手の親指を立てるゆっくり仮面。その口元から覗く白い歯がキラーンと光った。 ゆっくりめーりんはまるで子供のような、きらきらと輝く純粋な瞳でそれを見ている。 「ではさらばだ! ふははははははは!」 鬱陶しいほど声高らかな笑い声を残してゆっくり仮面は去って行った。 「じゃおおおおおおおおん♪ じゃおおおおおおおおん♪」 遠くなっていく背中にめーりんは叫び続ける。 言葉の意味はわからなかったがその声には確かに喜びと感謝が強く含まれていた。 今日もか弱きゆっくりを助けたゆっくり仮面。次はどこへとゆくのだろうか。 明日は明日の風が吹く。弱きを助け強きを挫く正義のヒーロー、お呼びとあらば即参上! ありがとう!ぼくらのゆっくり仮面! つよいぞ!ぼくらのゆっくり仮面! 所変わって先ほどの森から少し離れたところにある何の変哲もない家。 静けさに包まれていたこの場所に主が戻ってきた。 「ただいまー」 「むきゅ、ただいま」 家に入ってきたのはゆっくり仮面とちびぱちゅりー。そう、ここが彼らの自宅だった。 ゆっくり仮面は背負っていた籠を床に置き、マントを脱ぐ。 「ふぅー、今日も楽しかったぜ」 そう言いながら顔に付けていた仮面を外すゆっくり仮面。 その下から現れたのは特にこれといった特徴のない爽やかな青年だった。 「むきゅ、お疲れ様。何だか今日は一段とテンション高かったわね」 ちびぱちゅりーが青年の肩から近くのテーブルに飛び移る。 彼女は普通のゆっくりとは違う、加工場生まれのゆっくりだった。 体は小さいが中の餡子はよく詰まっており、いわゆる知能強化型のゆっくりだ。だから台詞にも漢字が使えたりする。 一人暮らしが寂しかった青年が話し相手として加工場から購入したもので、今では二人は強い信頼で結ばれた相棒となっている。 「ふふっ、どうしてかは知らないけど気分が高まってね。木から飛び降りた時に脳内で何か分泌されたのかもしれない」 「別にいいけど、あまり無茶はしないでね」 和気あいあいと和む二人の耳に籠に詰められたゆっくりありすの声が聞こえた。 「ちょっと! さっさとだしなさいよね! とかいはのありすにこんなことしていいとおもってるの!?」 「ああ、忘れてた」 「お兄さん、こいつらも『お仕置き』するの?」 ちびぱちゅりーが聞く。 これまで捕えてきた悪のゆっくりは青年が『お仕置き』してその腐った性格を治しているのだ。 正義のヒーローとして悪を捕まえ、それを『お仕置き』によって更生させる。 それがお兄さんの趣味だった。ちびぱちゅりーも何だかんだで楽しんでいる。 「当然だ。ぱちぇも知っているように、俺は一方的な『弱い者いじめ』をする奴が大嫌いなんだ」 その言葉を聞いてちびぱちゅりーは溜息を吐いた。 が、それは別に不快感から来ているわけではなく、元気な子供に手を焼く母親のような印象を受ける。 「やっぱりあんたいい性格してるわ」 「おいおい、照れるじゃないか」 「むきゅー、褒めてないわよ」 ははははは、と二人の楽しげな笑い声が家の中に響く。 お兄さんとちびぱちゅりー、二人の妙な趣味はこれからも続く。続くったら続く。 おしまい このSSに感想を付ける
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「おにーさんこんにちは!きょうもいいてんきだね!」 「こんなひはゆっくりできるよ!」 「ゆっくち!ゆっくち!」 「こんにちは。おいしいものが手に入ったんだけど一緒に食べないかい?」 「ゆゆっ!おいしいものたべたい!」 「おにーさんありがとう!」 「じゃあ家までついてきてね!」 ある目的のためにゆっくりまりさを探していた俺は、自分の幸運に感謝しながらゆっくりまりさを丸め込んだ。 家にやってきたまりさたちは縁側の前で止まった。俺がゆっくりの方を向くと、 「おにーさんなかにはいってもいい?」 「あぁ、いいよ。」 「ゆっ!ありがとう!」 「ゆっくりおじゃまします!」 「ゆっくりちていっちぇね!」 「おにーさんのいえにはいるまえによごれをおとしてね!」 「ゆっゆっ!」 ずいぶん入り慣れているな。どこで覚えたんだろう。 「まりさたちははたけしごとてつだってるんだよ!」 「おじーさんからはだいにんきなんだよ!」 「でもおじーさんはきびしいからちょっとこわいんだよ!」 「ゆ~!」 どうやら年寄りの畑仕事を手伝って餌をもらっているらしい。そのときに覚えさせられたのか。 「じゃあ今日は畑仕事の帰りかい?」 「ちょっとちがうよ!そろそろふゆごもりじきだからえさをもっとあつめにいこうとしてたんだよ!」 「ちゃんと準備してるんだね。えらいえらい。」 「えっへん!」 たわいもない雑談をしながら、お菓子をゆっくりと食す。赤ちゃんたちはまだまだ汚い食べ方だったが、親ゆっくりの一人がなめて綺麗にしてあげていた。 「おにーさんありがとう!えさをあつめないといけないからもういくね!」 ゆっくり全員が食べ終わった後、親まりさは俺にお礼を言ってきた。しかし、このまま逃がすわけにはいかない。 「あ、ちょっといいかな?」 「どうしたの?」 「まりさたちは帽子で水の上を動けるんだよね?」 「そうだよ!まりさたちのぼうしはすごいんだよ!」 「実はまだ見たことなくてね。ちょっと見せてくれないかい?」 「おやすいごようだよ!こどもたちはまだちょっとへただけどまりさたちはじょうずだよ!」 餌付けの甲斐あってかすんなりと聞いてくれた。後は誘導するだけだ。 「じゃああっちに水を溜めてるからそこでやってみてくれないかな?」 「すいそう?まりさたちはかわでやってるよ!」 「川は今寒いだろう。ちゃんと暖かい場所を用意したからそこでやってくれないかな?」 「さむいのはいやだからすいそうでやるよ!おにーさんあんないしてね!」 「おかーちゃんたちにまけないんだから!」 「ゆゆゆ!」 先ほどの親まりさの言葉に闘志を燃やしている子供たち。 はやくはやくと周りを跳ねだしたので踏まないように倉庫近くに作った部屋に連れて行ってあげた。 「ここならあたたかくてゆっくりできるだろう?」 「ここならゆっくりできるよ!」 「じゃあ見せてくれるよね?」 「まかせてよ!でも・・・たかくてとどかないよ!」 確かにこの水槽の高さはは1m近くある。今は水を張っているが酒造りなどにも使える大型の水槽だ。 その高さの半分ぐらい水を入れてあるから、水面はまりさたちのいる水槽の上からは遠く見えたのだろう。 「水にはいるには高いとダメなのかい?」 「そうだよ!まりさたちはさきにぼうしをうかべるから、こんなにたかいとぼうしがながれちゃうよ!」 「なるほど、じゃあこうしよう。」 そういって親まりさから帽子をとる。いきなり取られて驚いたまりさを素早く持ち上げて帽子の中に入れてあげる。 「これで俺が水に入れてあげれば大丈夫かな?」 「ゆっ!これならだいじょうぶだよ!」 「じゃあ順番にいくよ。」 「まって!ぼうしのなかにきがあるからそれがいるよ!それがないとおよげないよ!」 「あぁ、ごめんごめん。」 親まりさをそっと水面に浮かべる。正直浮くとは思ってなかったんだが本当に浮きやがった。 親まりさは口に咥えた木の棒で器用に泳いでいた。他のまりさたちが急かすので順番に入れてやる。 まだ小さいまりさはうまく泳げていないようだったが親ゆっくりの手助けで何とか浮いているようだった。 「気に入ったかい?」 「ゆっ!おにーさんここひろいね!」 「ゆっくちできるね!」 「あ!おさかなさんだ!」 「ゆゆっ!くさもはえてるよ!」 「おそととおんなじー」 どうやら気に入ってくれたようだ。近くの川のものをここまで持ってきたのだからゆっくりたちも見覚えがあったのだろう。 苦労はしたが、ゆっくりがよろこんでいるのでよかった。 「じゃあ今日からそこに住んでね。」 「ここでゆっくりするね!・・・なんでええええええええ!」 俺が言ったことに素直にうなずいた後、いきなり驚き叫びだした。どうしたと言うんだ。 「聞こえなかったかい?今日からここに住んでね!」 「まりさたちはすにかえるよ!ここじゃゆっくりできないよ!」 「ここでもゆっくり出来るようになって貰うから安心していいよ。」 「ここじゃゆっくりできないいいいいいいいいいい!」 「ここじゃはねれないよ!ゆっくちちたいよ!」 「ゆ゙ゔううううううううう!」 いきなりここに住んでねと言われて、まりさたちは戸惑っているようだ。子まりさは泣き叫んだり、親ゆっくりの方を心配そうに見ている。 親まりさはそんな子供達を慰めながらもう一度話しかけてきた。 「ここにはつちがないからゆっくりできないよ!みずにはいるととけちゃうんだよ!」 「溶けちゃうのか。じゃあ、落ちないように気をつけてね!」 「おにーさんまりさたちなにかわるいことしたの?」 「わるいことしたならあやまるよ!だからたすけてね!」 どうやら自分達が悪いことをしたからお仕置きされていると思ったらしい。二匹の親まりさが俺に謝ってきた。 その様子に子まりさたちも親の後ろで謝りだす。ちょっとうるさいかな。 「勘違いしてるよ。まりさたちは何も悪くない。」 「じゃあなんでごん゙な゙ごどずる゙の゙おおおおおお!」 どうやら理由を話したら分かってくれるらしい。 「おにーさんのところにね、依頼がきたんだよ。水上で生活するゆっくりまりさがほしいって。」 「な゙に゙ぞれ゙ええええええええええ!」 「いやぁ、必死に頼んでくるもんだからさ。断りきれなくて。だからまりさたちはがんばってなれてね!」 「ゆ゙っ!じゃあこどもたちだけでもたすけてよおおおおお!」 「お゙があ゙ぢゃああああああああああああああん゙!」 どうやら自分達が犠牲になれば子供達は助かると思ったらしい。 「そうしたいんだけどね、その人は子ゆっくりがいいらしいんだ。だから逆はできるよ。」 「ぞれ゙ばだめ゙ええええええええええ!」 「まぁその人はちゃんと飼うっていってたからここで水上で生活できるようになってれば命まではとられないよ(タブン)だから親まりさはがんばって子供達をそだててね!」 そうやって話を切り上げた俺は、餌は決まった時間に持ってくるよと言ってから泣き声のする部屋を出た。 これからしばらく、やったこともないまりさの水上生活支援をしなければならない。 まりさたちが立派な水上ゆっくりになることを期待しながら初日が終わった。 何事も初めてだと失敗するものだ。 朝起きてまりさたちの確認に行くとまりさたちは寝てないようだった。 「ちゃんと寝ないとダメじゃないか。これじゃ病気になっちゃうよ。」 「ゆっ!だって、ねるとみずにおちちゃうよ!」 「なみがくるとあぶないんだよ!」 「ゆっくちちたいよ!」 「あかちゃんたちがねれないよ!はやくりくにあげてね!」 困ったな。水上で寝るのを怖がって寝れないのか。確かに、ゆっくり一匹だと波が来れば流されたり、溺れたりするだろう。 一匹じゃ無理となると・・・ 「よし、お前達もっと固まってみろ。」 「ゆゆっ?かたまってどうするの?!」 「いいからいいから。」 そういってまりさたちを一箇所に集める。 まず、親二匹を皮がくっつくぐらいに近づけ、その周りに同じく皮がくっつくぐらい子まりさを近づけてやった。 遠くから見たら大きい帽子にまりさたちが詰まってるように見える。 これならば波にも耐えられるのではないか。 「よーし、いくぞー。」 「やめてね!なみをたてないでね!」 「ゆっくちできないいいいい!!」 怖がるまりさたちを気にせず、水面を叩いて波を作る。 結果、水槽から水が出るぐらいまで揺らしてもまりさたちは沈まず水上に居続けた。 「ゆゆっ!どうしてー?」 「水面に接する面積が増えてひっくり返りにくくなったからかな。」 「?」 「まぁこれで寝れるんじゃないかな?」 「ゆゆっ!これでねれるよ!おにーさんありがとう!」 昨日のことも忘れて俺に感謝してくるゆっくりまりさ。朝食を上げる予定だったがすやすやと家族で寝てしまったので止めにした。 昼にやってくるとまりさたちは起きて水面を泳いでいた。 水上で生活しなければいけなくなったので、泳げないのは死に関わる。 親まりさは子供達が少しでも上手くなる様にと、俺に気づきもせず子供達をしごいていた。 先に気づいた子まりさはこれでゆっくりできると思ったのか目を輝かしながらこっちによってきた。 「おにーさんおとーさんがまりさたちをいじめるよ!」 「いじめてないよ!まりさたちがおよげるようにしてあげてるんだよ!」 「そうだよ!でたらめいわないでね!」 「ゆゆぅ・・・ごめんなさい!」 「昼ごはんを持ってきたんだけどいらないかな?」 「ゆっ!まりさたちはおなかぺこぺこだよ!はやくたべさせてね!」 「ごはん!ごはん!」 他のゆっくりたちもご飯と言う言葉に反応してこっちに近づいてきた。 俺は持ってきた野菜にテープで糸を取り付け水槽の上に吊るしていく。 「はい、昼食だよ。」 「これじゃとどかないよ!」 「舌を伸ばしても届かないかい?」 「ゆっ!・・・ゆ゙ううううう!とどかないよー!」 懸命に舌を伸ばして餌を取ろうとするまりさたち。しかし餌は親まりさの舌よりすこし高い位置にあり、もう少しで届きそうだった。 「もうすこしでとどきそうだね。がんば!」 「ゆ゙うううううううううう!」 必死に舌を伸ばす親まりさ。舌の先がぷるぷる震えてる。 親まりさが届かないのに子が届くはずはなく。子まりさ達は親まりさを応援して少しでも役に立ったつもりになろうとしていた。 俺も応援モードになって子まりさと一緒に応援する。 一時間ほど延ばし続けるとなんと餌に舌が届いた。 「ゆっ!むーしゃ!むーしゃ!しあわせー!」 「おかーさんとおとーさんだけずるいよ!」 「まりさたちにもたべさせてね!」 文句を言う子供達に舌を伸ばして餌を与える親まりさ。 前に薬を売りにきた兎に頼んで作ってもらったゆっくり用の成長剤が効いたのだろう。 お菓子に仕込んでおいてよかった。しかし、これでは子供達の舌が伸びない。 「次から子供達と別々にして餌やりだな。」 そんな独り言も餌に夢中なまりさたちは気づかない。 餌を全部食べ終わるとまた子供に泳ぎ方を教えだしたので俺は部屋を出て行った。 それからしばらくゆっくりまりさの観察と躾は続いた。 ずっと帽子に乗ったままで運動不足にならないのかと思ったが、ゆっくりは動かなくても平気らしい。ゆっくりらしいと言えばらしいな。 帽子も腐ったり穴が開いたりせずに最初の形を保っている。命より大事な一つの帽子はそれだけの強度があるのか。ゆっくりの神秘。餌取りもだいぶ慣れたようで、別の場所で育てた茎についた野菜や枝についたままの果物を舌で上手に取って食べれるようになった。今日もゆっくりは慣れたように泳ぎ回っていたり、餌を取ったり、ぷかぷかと浮いている。 ムカついたので水槽を揺らすとゆっくりたちは慌て出す。 面白いのでもっと揺らすと、まりさたちは近くのまりさとくっつき始める。 やがて2ペア、4ペア、8ペアと増えていき、最後には一つの固まりになるのだ。 最初に教えたゆっくりできる方法をゆっくりなりに進化させたのだろう。 ゆっくりの行動に感動しながらもっと激しく揺らす。 「や゙め゙でええええええええええ!!」 「ゆ゙っぐり゙ざぜでえええええええええ!!」 「ゆ゙うううううううう!」 すばらしい。これなら依頼者も満足するだろう。 俺は電話をしに別の部屋へ向かった。明日には渡せるだろう。 その夜。餌を食べてゆっくりしてるまりさたちの元に網を持って向かう。 「ゆっくりしていってね!」 「今日はゆっくりしに来たんじゃないんだよ。」 「ゆっ?」 「明日依頼者にまりさたちを渡すことになってね。今から別の水槽に移すことにしたんだ。」 「ゆゆゆっ!?」 どうやら最初に言ったことを忘れていたらしい。 親まりさは子供達を庇うようにして俺の前に浮かぶ。 「こどもたちをつれていかないでね!」 「まりさがいくからこどもたちはおいてあげてね!」 「おとーさああああん!」 「残念だけどほしがってるのは子まりさ4匹なんだ。」 親まりさを棒でつつく。水の上では抵抗できず、子供達から離れていく親まりさ。 子供たちは親がいきなりいなくなって驚き顔だ。 「ゆゆ!こないでね!ゆっくりさせてね!」 「みんなにげるよ!」 「おにーさんはそこでゆっくりしててね!」 蜘蛛の子を散らすように逃げ出す子まりさ。 俺は用意していた網で子まりさを4匹捕まえた。 やっとも戻ってきた親まりさと子まりさが俺に文句をいう。 「こどもたちをかえしてえええええええええ!」 「おねえええちゃあああああん!」 「おねーちゃんとゆっくりしたいよおおおおおお!」 「大丈夫だよ。」 「ゆ?」 「この4匹は依頼者がちゃんと育てるって言ってたからね!」 「ゆ゙うううううううううう!」 まだ叫ぶ家族を残して俺は用意した水槽に子まりさを入れる。 「お゙がああああああああざあああああん!」 「お゙どおおおおおおざあああああああん!」 「ゆっくりできないいいいいいいいい!」 「おにーさんのばがあ゙あああああああああ!」 泣き喚く子まりさを沈めたくなったが、依頼者のことを思い出し我慢。 別にまだ子供達がいるから沈めてもいいのだが、戻るとまだうるさいだろうし。 2日分の餌を入れてから蓋を閉め、空気穴がちゃんと開いているかを確認してから水槽を一度叩く。 叩いた衝撃でまりさたちが固まって泣き叫ぶのを確認した俺は子まりさの水槽から離れた。 次の日、依頼者がやってきたので昨日準備した水槽を渡す。 依頼者は水槽のなかのゆっくりを初めて見てから水槽を突っついたりして中のまりさたちと遊んであげている。 このままではずっとそうしていそうなので声をかける。 俺に気づいた依頼者は報酬のお金を払った後スキップしながら家へと戻っていった。 あれぐらいの揺れでも固まってやり過ごせるだろう。やはり教えといてよかった。 依頼者が見えなくなると、俺はまりさの家族がいる部屋へと向かった。 あの部屋には子まりさを捕まえてから言ってなかったから少し心配だったが、どうやらちゃんと生きているらしい。 まだ親まりさは落ち込んでいたが子まりさたちが励ましている。直に元気になるだろう。 「おーい、餌を持ってきたぞ。」 「おにーさんなんかきらいだよ!」 「ずいぶん嫌われちゃったな。」 「まりさのこどもをかえしてね!」 「あいつらはもう依頼者が持っていっちゃったよ。」 「ぞん゙な゙あ゙ああああああああ!」 「まぁ元気にやってるだろうさ。じゃあこれからもそこで生活してね!」 「ゆっ!もういらいしゃにあげたんでしょ!りくにもどしてよ!」 「じつはあかちゃんまりさがいいっていう人もいるんだよね。だから何世代か育てて水上に適応した赤ちゃんまりさをつくるんだ。」「なにいってるかわからないよ!はやくそとにだしてね!」 「ダメだよ!死ぬまでそこでゆっくりしていってね!」 「ゆ゙っぐり゙でぎな゙い゙いいいいいいいいい!」 親まりさは今にも狂いだしそうだ。これはまずいか。そのとき、 「ゆっ!おかーちゃん!まりさはここでもゆっくちできるよ!」 「そうだよ!ここなられみりゃもこないしあんぜんだよ!」 「えさもずっとあるし、ふゆもないしここがいいよ!」 子まりさは陸にいた日が親より少ないからあまり気にならないのか慣れたのか、親まりさをなだめる。 親まりさも残った子供達が減るのを良しとしないのかここに残ると言い出した。 その言葉に安心した俺はいつもより多めに餌をやって部屋をでた。これなら今日の夜には大丈夫だろう。 夜になってまりさたちが寝たのを確認した後、俺はゆっくりの水槽に近づいた。 水槽の中では子まりさが減って若干小さくなった塊がすやすやと寝息を立てていた。 その中から親まりさを慎重に取り出す。そのままでは子まりさが死んでしまうので変わりにブイを入れるのも忘れない。 水槽から出された親まりさはまだちゃんと起きてはいない。完全に起きるとうるさくなって子まりさも起きてしまう。 俺は二匹をくっ付けて揺すりながら別の部屋に向かう。ここならば水槽の子供達に聞こえまい。 親まりさを離すと親まりさは発情していた。 すぐに重なって交尾を始めるまりさを見届けた後、俺は元のように水槽にもどして部屋を出た。 翌朝、水槽に向かうとなにやら騒がしい。 「どうしたんだい?」 「おにーさんまりさにあかちゃんができたよ!」 「まりさのいもうとー!」 「はやくみちゃい!みちゃい!」 昨日の交尾ですぐに芽が出たのか。多少驚きながらも成長剤のことを思い出して一人納得する。 子まりさがいなくなったことも忘れてしまったのだろう、親まりさと子まりさはとてもうれしそうだった。 「じゃあゆっくり子供を産むんだよ。」 「ゆっくりがんばるよ!・・・でもあかちゃんがこのままだとみずにおちちゃうよ!」 「産まれてすぐには帽子に乗れないか。」 「そうだよ!あるていどおおきくならないとむりだよ!だからりくにあげてね!」 「それはダメ。」 「じゃあどうするのおおおおお!」 このままでは産まれてすぐ死んでしまうか・・・ 野生にあるもので水に浮いているものが必要だな。 「よし、ちょっとまってな。」 そういって俺は枯葉や小さな枝を水槽に浮かべていく。 ゆっくりは不思議そうに俺の行動を見ていた。これなら覚えてくれるかな。 俺は浮いた木の枝や枯葉をまとめる。すると小さな浮島になった。 これなら赤ちゃんゆっくりぐらいなら乗れるだろう。 「どうだい?こうすれば赤ちゃん達もゆっくりできるよ!」 「そうだね!おにーさんありがと!」 「まだ足りないかもしれないけど、後は自分で大きくしてね。やり方は分かったね?」 「だいじょうぶだよ!ゆっくり大きくするよ!」 「じゃあがんばってね!」 まりさたちは大きくしようと枝や水に浮かぶ枯葉などを捜しに散っていった。 これで赤ちゃんも育てられるだろう。 ゆっくりの交尾だけは水上でさせる方法が思いつかず陸上に上げたが、勝手に交尾して増えないのはありがたいので次もこの方法でいこう。 だいぶ浮島が大きくなった頃、とうとう赤ちゃんが生まれる瞬間になった。 俺は子まりさととともに親まりさを見守る。手助けしてしまうと次からの子育てに支障をきたす。 やがて芽が出た方のまりさの表情が変わった。 「もうすぐうまれるよ!」 「ゆっ!がんばってうけとめるよ!」 もう一方の親まりさが浮島を動かして赤ちゃんの実を受け止めるのだ。一匹でも出来そうだが二匹の方がより安全だと思ったのだろう。 口に浮島を含んだまりさも自分に生った実を見つめるまりさも真剣だ。 やがて最初の実が落ちる。 「そこだよ!」 「ゆっ!」 なんというコンビネーション!二匹の親まりさの連携で浮島の上に実が溜まっていく。 結局水に落ちた実は3個。残りは浮島の上に無事落ちた。 水に落ちた実を見た親まりさはショックを受けていたがそれも最初だけ。 すぐに落ちる次の実を受けとないと水に落ちると二個目を水に沈めて気づいたまりさは三個目に落ちた実を気にせず次の実に向かっていく。 落ちた実には興味もないのか浮島の上にある実をみて喜ぶ親子まりさ。 だが、俺は落ちた実の方に興味を持った。水中カメラを用いて落ちた実を観察する。 中に水が入っているかと思ったが中に水は漏れてないらしい。中の赤ちゃんまりさが動いているのがかすかに分かった。 実を食い破って外にでようというのだろう。外は水で満たされているとも知らずに。 だんだんと皮が薄くなる。もうすぐ出てくる。俺はじっと目を凝らした。 そして、 「ゆkkぐぼおおおおおおお!」 確かにそんな声を聞いた。 生まれてすぐ死んでしまう赤ちゃんはどんなことを思っていたのだろう。 生まれて初めて見たのは母親じゃなくて魚だったときどんな事を思ったのだろう。 ふと、溺れている赤ちゃんまりさがカメラを通してこちらを向いた気がした。 たすけて そんな風な目だった。俺はにっこり笑うと口だけを動かした。 ゆっくりしね 口の動きでなんて言ったか赤ちゃんに分かっただろうか? 確認はすぐに魚に齧られて痛がるまりさからは出来なかった。 そんな赤ん坊を3回見てからカメラを置く。 陸上では運よく生き残った赤まりさがげんきよく飛び跳ねようとして親まりさにしかられていた。 飛び跳ねると浮島が沈んじゃうかもしれないしね。 こいつらはゆっくり飛び跳ねたりしないままいき続けていく。 まだ陸の記憶があるのだろう。すこし不満げな赤ちゃんまりさを子まりさが慰める。 後何世代か必要か。 俺は依頼者に赤ちゃんまりさを渡すのはいつごろになるのかと頭の中で予想しながら餡子に水上生活をしみこませる方法を考えていた。 このSSに感想を付ける
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(スペア) 「ゆぎゃああああああああ!!!!」 「やべっ!やっちゃった。まいったなぁ・・・」 「い゛た゛い゛!!い゛た゛い゛よ゛お゛お゛お゛!!!」 「おかあさーん。おかあさーん。ちょっと来てー。」 「どうしたの?」 「ゆっくりを釘で引っ掻いて遊んでたら壊れちゃった。目が片方無くなっちゃったよ。」 「めがっ!めがああああ!!ああああああああああ!!!」 「こんな、どっかのグラサンした大佐みたいなゆっくりなんてやだよ。治して!」 「しょうがない子ねぇ。折角お父さんが買ってきてくれたんだからもっと大事にしなさい。」 「わかったよぅ。それで、治るの?」 「ちょっと待っててね。」 母親は『スペア用』と書かれた籠の前に行く。中には一匹のまりさ。 おととい家庭菜園に侵入し、ひとりで「むーしゃむーしゃ」とやっていたのを捕まえたものだ。 まりさは異様な姿をしていた。目は片方だけ。餡子は少なく、皮も半分剥がされていた。 皮が剥がされた部分は餡子が漏れぬようラップで包まれ、かろうじて生かされている。 「ごめんなさい。ごめんなさい。もうしません。ゆるしてください。ごめんなさい・・・」 母親はぶつぶつとうわ言を呟くまりさを抱えると、ナイフを取り出し眼を抉る。 「びゃあああああ!!めが!!めがみえない!!なにもみえないよおおおお!!!!!」 両目を失ったまりさは無視。取り出した眼を持ち子供の所へ。 「と゛う゛し゛て゛れ゛い゛む゛に゛こ゛ん゛な゛こ゛と゛す゛る゛の゛お゛お゛お゛!!!!」 泣き叫ぶれいむを尻目に、子供は猫を膝にのせ絵本を読んでいた。 母親はれいむの無くなった右目にまりさから取り出した眼をねじ込む。 「ひぎいいぃぃぃぃ!!!いだああああい!!いだあああいよおおおおお!!!!」 入り込んで来た異物を押し出そうとれいむの体はぶるぶる震える。 まりさの眼球がれいむの目の中でコロコロと転がるのを押さえながら、母親が呟く。 「やっぱりれいむにまりさの眼は合わないのかしら。拒絶反応がでてる。」 「治ったー?」 「まだ駄目ね。目玉が飛び出さない様にセロハンテープで固定しておいて。 破れた皮は自分で治しなさい。やり方は教えたでしょ。まりさから皮を剥いで破れた所にテープで貼るのよ。 冷蔵庫にオレンジジュースが入ってるから。それを飲ませれば早く治るわ。」 「はーい。」 「い゛た゛い゛よ゛お゛お゛!!!だれかこれとって゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」 子供はれいむの泣き言を無視し、テキパキと工作を済ませる。 それを終えるとオレンジジュースを飲みながら、泣きわめくれいむの様子を眺め呟いた。 「次は何をして遊ぼうかなぁ。」 (ゆっくり合戦) その年の人間の里の天候は異常だった。兆候は夏の頃からあった。 過去に例をみないほどの酷暑。その勢いは秋になっても衰えなかった。 晩秋になっても木々の葉は落ちず、やっと冬らしい気温になり、ゆっくり達が巣に籠ったのが今月の初め。 そしてもう二月になろうというのに未だ雪は降っていなかった。 里の広場には恨めしそうに空を眺め、ぐちぐちと文句を言う子供達が集まっていた。 遠くの山にはしっかりと雪が積もっている様なので来春の水不足の心配は無い。 大人達はやっかいな雪かきから解放され、むしろ喜んでいる様だ。 しかし子供達ににしてみればこれは大変な問題だった。 雪合戦ができない!!! 今日も雪は降りそうにない。ひょっとしてこのまま降らないんじゃないだろうか。 そんな事を話しているところへ悪ガキの一人がニコニコしながらやって来た。 「ねえ!みんな聞いてよ!いい事を思いついたんだ!」 「いい事?」 「そう!これで雪合戦ができるよ!」 子供らはその子の説明を聞くと、走って家にもどり手に手に籠を持って里のはずれに集まった。 皆が集まると彼らはゆっくりの巣がある近くの森に歩いて行く。越冬中のゆっくりを捕まえるため。 そして集めたゆっくりを雪玉の替わりにして雪合戦をしようというのだ。 森にやって来るとめいめいゆっくりの巣を探し始めた。 ゆっくり達も巣が見つからぬ様それなりに偽装してはいるのだが、次々と見つかってしまう。 ゆっくりは子供達の遊び道具。子供達はゆっくりについて何でも知っていた。 「おー、いたいた。しかしこんなんで隠れてるつもりなのかな。」 「ゆっくりしていってね!!!でもそとはさむいからはやくどあをしめてね。」 「へーこれってドアだったんだwまぁどうでもいいや。ゆっくりさせてやるからとっとと捕まってね。」 「ゆーーーーー!!!れいむのあかちゃんになにするの!!!はやくはなしてね!!!」 「ゆゆ!やめて!!ここからだして!!!」 「ゆ!まってて!いまたすけるよ!!こんなにんげんなんかすぐやっつkゆぐぇえええ!!!!」 「うっせーな。お前も籠に入るんだよ。一緒に連れて行ってやるんだから静かにしてろ!」 子供達は籠一杯にゆっくりを集めると広場に集まり準備を始めた。 親ゆっくりは底面に焼きを入れ、動けない様にしてから積み上げて陣地を造る。 赤ゆっくりは何箇所かに分けて置いておき雪玉の替わりにする。 中途半端な大きさのは串にさして焚火の周りに刺しておく。運動の後のおやつだ。 いよいよゆっくり合戦が始まった。広場には子供達の歓声とゆっくりの悲鳴が響き渡る。 ひゅーん、べちゃ。ひゅーん、べちゃ。ひゅーん、べちゃ。 次々と親ゆっくりの壁にぶつかり潰れていく赤ゆっくり達。 「ゆあああああ!!!れいむのあがち゛ゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 「やめて!!あかちゃんをなげnむぐっ!!!」 「あああああ!!!ありすが!ありすがまりさのあかちゃんをたべたあああああ!!!!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!あ゛か゛ち゛ゃん゛!あ゛か゛ち゛ゃん゛か゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 陣地の後ろの方では給弾担当の子供達が赤ゆっくりを作っていた。 「ほら、こうやって振動させてからくっつけると交尾を始めるんだ。」 「へー。よく知ってるね。」 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ・・・・・・」 「いやだあああ!まりさはれいむとすっきりしたいのおお!!はなしてえええええ!!!!」 「や゛め゛て゛え゛え゛!!!これいじょうすっきりしたらしんじゃうよおおおお!!!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!す゛っき゛り゛ー!!!」 ゆっくり合戦は日が落ちるまで続いた。 (無限ループ) れいむのつがいに待望のあかちゃんが産まれた。 「ゆっくちしていっちぇね!!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「やったねれいむ!ゆっくりらしいかわいいあかちゃんゆっくりだよ!」 「うん!ふたりでだいじにゆっくりそだてようね!!!」 その日二匹の間に産まれた五匹の赤ゆっくりは両親に守られゆっくりと育つ。 最初に産まれた赤れいむは好奇心旺盛で巣の外に出ようとしては母ゆっくりに怒られた。 「なんでそとにでちゃいけないの!れいむもおそとであそびたいよ!!!」 「だめだよ!おそとにはこわいにんげんがいるんだよ!」 「えさはおかあさんたちがとってくるよ!あかちゃんたちはいえでゆっくりまっててね!」 「ぷーーーーーー!!!」 そんなある日、ゆっくりの両親は巣の入口を閉めるのを忘れて外に出てしまった。 「ゆ!おそとにでられるよ!」 「だめだよ!おかあさんがそとにでちゃいけないっていってたよ!」 「だいじょうぶだよ!とおくまでいかないから!すぐにもどってくるよ!!!」 とうとう一匹だけで巣の外に出てしまった赤れいむ。 外の世界は初めて見る珍しいものばかり。 ひらひらと飛ぶ蝶を追いかけ、とうとう人里近くまで来てしまった。 「なんだこいつ。赤ゆっくりが一匹で外に出てるなんてめずらしいな。」 「今日はこいつで遊ぼうか。」 「ゆーーーー!!!なにするの!!!はなじでえええ!!!」 暇を持て余していた子供達に捕まってしまった赤れいむ。 数十分後そこには瀕死でプルプルと震える赤れいむがいた。 そこへ偶然神様が通りかかる。 目は潰され、皮は焼かれ、身は削がれ、「ゆぅぅ、ゆぅぅ」と力なく鳴く赤れいむ。 それを不憫に思った神様が赤ゆっくりに話しかける。 「かわいそうに。今痛みをとってあげますからね。」 「ありがとう・・・」 「でもこれは痛みを取り除いただけです。傷が深すぎてもう手の施しようがありません。 あなたは間もなく死ぬでしょう。ここで会ったのも何かの縁。言い残す事はありませんか?」 「ゆっくりしたかった・・・れいむはもっとゆっくりらしくゆっくりしたかったよ・・・」 「そうですか。せめてあなたの来世が幸せでゆっくりなものになりますように・・・」 神様は生まれてすぐに死んでしまった哀れなゆっくりの願いをかなえてやる事にした。 れいむのつがいに待望のあかちゃんが産まれた。 以下ループ・・・ end このSSに感想を付ける
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ゆっくりと紐 体内受精をしたゆっくりれいむと、それを見守るゆっくりまりさ。 とうとうここまで来たのだなあ、と、感慨深く思い起こす。初めてこいつらと 出あったのは、春の桜が散り切る前のことだったろうか。ゆっくりの家宣言をさ れた俺は、その唐突な内容よりも愛らしい彼女達の仕草に心を奪われてしまった のだ。 だって可愛いのだもの。 毎日のようにご飯を食べさせ、ワガママを聞き、ゆっくりとさせてやる毎日。 頼っているという自覚すらないのだろうが、それでも俺は幸せで、ゆっくりと できた。 冬も間近、二匹の初めての子が生まれた。枝にまるまると実った彼女達は、本 当に幸せそうに笑っていた。俺自身家族が増えたことに大層喜び――その頃には 『おにいちゃん』ではなく、『おとーさん』と呼ばれ始めていた――、さらにゆ っくりとした暮らしを深めていた。 だが俺の稼ぎはそれほど多くはなく、多数の家族を養えるほどではなかった。 ゆっくりの姉達は一様に、父母と新しい子供を養うことを選択し、次の子供が生 まれると、なごり惜しげに皆旅立って行くのだった。 悲しい出来事もあった。 どこからか入り込んだゆっくりぱちぇりーに、生まれたての子ゆっくりが連れ 去られ、多数が行方不明になったこともあった。他のゆっくりが入り込み、子供 たちの何人かが犠牲になったこともあった。それは不幸ではあったが、家族の絆 をより深め、こうして新たな幸せを迎える原動力ともなったのだ。 世の中には、ゆっくりを食べたり、虐待したりする人がいるらしい。見つけ次 第に殺してしまうのも居る。だがどうだ、ゆっくりはこうしてゆっくりしている だけで、果てしなくゆっくりをもたらしてくれると言うのに……。 ・ ・ ・ 「うまでるよ! もうずぐばぢざとでいぶのあがじゃんがうばでるよ!」 顔を真っ赤にして、それでも幸せそうに叫ぶ母れいむ。父まりさと子供たちに 囲まれた彼女に近づいて、出産の手助けをしてやる。 「れいむは出産初めてだよな?」 「う゛? 子供だぢならだぐざん産んだよ?」 違う違うと手を振り、俺は簡単な説明をする。 「枝から生まれる子供と、おなかから生まれる子供は違うんだ。今回みたいにお なかから生まれる場合、何の準備もしないと、危険が危ないからゆっくりできな いんだよ!」 そう告げられた一同は、「ゆっくりしたいよぼおお!」「あかじゃん! まぢ ざのあがぢゃんが!」「ゆっくりなんどがぢでえええ!」などと騒然とし始める。 「でも、これさえあれば大丈夫だよ!」 出産のために用意してきた道具を取り出す。泣き叫ぶ声が歓声に変り、俺はそ の道具を母れいむに巻き付けた。 「おとーさん、これなに? ゆっくりできるもの?」 「ああそうだよ、ゆっくりできるよ……とさて、聞いてくれ」 「何なに?」「ゆっくりする?」 「これはね、『紐』というんだ。出産をするときに、赤ちゃんが勢い良く飛び出 すからね! 怪我をしないように巻きつけてあげるんだよ! みんなも怪我した らいけないから、つけてあげるね」 信頼している『おとーさん』のセリフに、誰一匹疑うことすらなく、『紐』を 体に巻きつけるゆっくり達。 「あ、まりさはこっちに来なさい。ゆっくりと出産を見れるようにしてあげるか らね!」 「わ、わかった! ゆっくり赤ちゃん見たいよ!」 俺は父ゆっくりまりさを、母れいむの目の前に固定した。俺は出産補助装置の 概要を、皆に説明する。 装置に固定された母れいむは、ゆっくりしながら出産することが出来る。そし て出産された赤ゆっくりは、赤ゆっくりゆっくり装置によってゆっくりさせられ る。子ゆっくりゆっくり装置は、母れいむの目前、固定された父まりさのすぐ体 下に設置されている。 「さあそろそろだな。みんな、動くと危ないから動いちゃだめだよ!」 「「「ゆっくりじっとしているね!」」」 「ゆ゛っ! ゆ゛っ! ゆ゛ぐりいいいいい!」 息も絶え絶え、頬を真っ赤にしながら、母れいむの出産が開始された。母れい むに巻きつけた『紐』には多少ゆとりがあるため、この程度で怪我をすることは ない。 「赤ちゃんだ! れいむの妹だよ!」 「違うよ、まりさの妹だよ!」 「ゆっくり! ゆっくり生まれていってね!!」 皆の応援のなか、生まれながら声を上げる赤ゆっくり。 「ゆ、くり、……う?」 違和感に気付いたのだろう、慌て始める。 「ゆ、おかあしゃんゆっくり出来ないよ! お顔がひたい、ひたいよぅ!」 「ば、ばだじのあがじゃん! どぼじだぼおおお!?」 「ゆ、ゆっくりがんばってね!」 だがもう出産は止まらない。勢い良く子供を産み出す母れいむ。 「い゛っ! ゆ゛っ! ぐりじでぶううううううううううう!」 母れいむに巻きつけられた鋼鉄の紐に輪切りにされ、絶命したまま勢い良く飛 び出した赤ゆっくりは、そのまま赤ゆっくりゆっくり装置にその亡骸を晒した。 「う゛あああ! でいぶどぶりぢいいいいいなあがじゃんがああああ!! あが じゃん! あがじゃっ!?」 そのショックが次の出産を早めたのだろう、下腹部が膨張し、新たな赤まりさ が顔を覗かせる。 「うっう……。お、おかあさんがんばって!」 娘達の応援に、今失ったばかりの命を思うゆとりも与えられず、出産を開始す る母れいむ。だがすでに赤まりさの顔には行く筋もの切れ込みが入っており、 「ゆっぐうううああああぶっ!!!」 生を得るのと同時に死に誘われた。 「うばああああああああああああ! あが! でいぶのあがああああ!!」 「あがじゃあああんんんんんんんん!!!」 装置に横たわり、ぴくぴくと震える、赤まりさだったもの。 ゆっくりと生まれ、ゆっくりと育ち、ゆっくりと旅立つはずだった、幸せなゆ っくりとなるはずであった餡の塊は、何を言うこともない。 絶望に染め上げる家族に向けて、僕は慰めの言葉を紡ぐ。 「もしかしたら、産むのが速すぎたのかもしれないな。可哀想に……ゆっくりし たかったんだろうにね」 その言葉にびくりと体を震わせる反応する母れいむ。目の前の我が子の亡骸に、 絶望の表情を浮かべる父まりさ。声すら立てずに涙を流すゆっくり一家。 そんな彼女達の心を癒すために、ビデオを見せてやる。 「おや、あれは何かな……?」 母れいむの、昔生んだ娘達の姿が、そこには映し出されていた。ビデオの概念 を知らない一家は、まるでその中に生活しているように見えることだろう。昔、 唐突に現れたゆっくりぱちぇりーにさらわれたはずの、生まれたての我が子。彼 女達の元気な姿を見せられた母れいむは、彼女達が生きていることに――今の状 況を忘れているわけではないだろうが――歓喜した。 喜びもつかの間、ゆっくりぱちぇりーによっていたぶられ、無残な姿を晒す赤 ゆっくり。その衝撃は、またも出産を早めたようで、何とか赤ゆっくりが生まれ ないように暴れだす母れいむと父まりさ。 「だめ! ゆっぐり! もっどゆっぐりじでえええええ! うばでだいで! う ばれないでぼおおお! ゆっぐりじでよぼおおお!」 「がばんじででいぶ! がばんじだいどまでぃだどでいぶのごどぼがああああ!」 ゆっくり達は気付かないが、装置は時間とともに母れいむを締め付け、出産を 強要する作りになっている。装置に固定されており、そもそも出産をコントロー ルする術も知らないであろう母れいむは、またも生まれながら死に絶える赤ゆっ くりを目の当たりにせざるを得なかった。 ビデオからは延々と、巣立ったはずの子ゆっくり達の断末魔が流れつづけ、生 まれては死んでゆく赤ゆっくりの残骸は増えていった。 ・ ・ ・ 時間を掛ければこんなにも「ゆっくり」させてくれる存在になるのだ。 次回の出産のためにも、信頼を損ねることは出来ないのだが、彼女達の信頼を 踏みにじる時のことを考えると、とてもゆっくりとした気分になれるのである。 このSSに感想を付ける
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■ゆっくりを飼いたいお兄さん 僕はゆっくりが飼いたい。 人間の言葉を喋る不思議なお饅頭。 なんと興味をそそられる存在なのだろう。 だが子供のころにシーモンキーを飼って以来、僕はペットを飼った事がなかった。 こんな僕でも上手く育てられるだろうか? 疑念は尽きない。 そう言えば飼ってたシーモンキーは、気がついたら水が無くなって全滅していた。 今回もダメかも知れない。 そんな僕に、ペットショップに勤める友人から、ゆっくりを飼わないか? と誘いがあった。 拾った野良ゆっくりの在庫が勝手に繁殖し、在庫が在庫を呼ぶバーゲンセール状態らしい。 そんな物売るなよとも思ったが、これは迷っていた僕にとって、またとないチャンスだろう。 一匹100円で良いよと言う友人の言葉も、僕の決意を後押しした。 「いらっしゃいませ──って、お前か。よく来たな」 「うん、やっぱり飼う事にしたよ」 後日、僕は友人の勤めるペットショップへとやって来ていた。 店内には犬や猫、よくわからない昆虫と一緒に、ゆっくりが所狭しと並んでいる。 ケースの中のゆっくりは寝ていたが、ふと気になって値段を見てみた。 桁が違う。お隣の血統書付きわんわん様と同じ値段だ。 「そっちはちゃんと調教されてるからな」 「だろうね。こんな値段じゃ買う気も失せるよ」 「現金な奴だなぁ。じゃあ、ちょっと奥に来いよ」 どうやらワンコインゆっくりは奥にいるらしい。 友人の後を追い、店の奥へと進んで行く。 「どれにする?」 友人に連れられ入った部屋には、ゆっくりの詰められた水槽がいくつも並んでいた。 水槽の中のゆっくりは足の踏み場もないらしい。 身動きも出来ずにゆっゆっと声をあげている。 こんなに多いと迷ってしまう。 というより、どれも同じに見えて仕方ない。 「なんか大きさ以外、どれも同じに見えるんだけど」 「飾りをよく見ろよ! ぜんぜん違うだろ!」 確かに違うが、僕にはその違いの意味が解らなかった。 きっとカブト虫とクワガタ虫の違いみたいな物なのだろう。 それなら強い奴の方が良い。長生きしそうだ。 「どのゆっくりが一番強いの?」 「お前はゆっくりで何がしたいんだよ!」 「あー、ごめんごめん。どのゆっくりが一番丈夫なの?」 「丈夫さなら、やっぱり大きい奴だな」 「じゃあ、これで」 僕はパッと見で一番目立った、大きなゆっくりを指差した。 赤いリボンのついた丸々と太った奴だ。 「れいむか。まぁ初心者は飼いやすいかもな」 「へー、もう名前ついてるんだ」 「いや、これは種類で──」 友人の説明を右の耳から左の耳に聞き流す。 やたらと種類がいるようだが、どうせ飼うのは一匹だ。 覚えても意味がないだろう。 「じゃあ、そのれいむとやらを買うよ。100円で良いんだよね?」 「ああ、もっと欲しくなったら言ってくれよ。当分、このまま置いておくからさ」 友人に100円を渡しながら、れいむをエコバッグの中に詰め込む。 れいむが何か言っていたが、家につくまで我慢してもらうとしよう。 僕はゆっくりとの生活に夢を馳せながら、るんるん気分で帰路についた。 「ふぅ、やっと家についたよ。さぁ、れいむ、ここで一緒に暮らそうね」 「ゆゆっ! やっとおそとにでられたよ。きのきかないおにいさんだね。でも、ここは、なかなかいいおうちだね。ここをきょうかられいむのおうちにするよ! おにいさんはゆっくりしてないで、れいむのためにごはんをもってき──ゆべぇえええええ!!」 やってしまった。 気づいたら潰していた。 なんという事だ。 家に持って帰って5分もたってない。 シーモンキーですら一夏持ったのに……。 僕は大きくため息をつき、また明日、新しいゆっくりを買いに行く事にした。 「ちょ、もう殺したのかよ」 「いや、なんか偉そうだったんで、つい」 「仕方ないなぁ。今度は殺すなよ」 翌日来店した僕を、友人が呆れ顔で迎えた。 再び友人に連れられて、ゆっくり部屋に移動する。 今度は失敗しないよう気をつけよう。 「どれにしようかなぁ? 大きいのはダメだったから、今度は小さいのにしようかなぁ?」 「えっ? 赤ゆっくりにするの?」 「いや、もう赤いのはいいよ。また潰しちゃうし」 「飾りの色じゃなくて、赤ちゃんにするのかって意味」 「あー、赤ちゃんだから赤ゆっくりね。なるほどね」 僕は友人の言葉に納得し、水槽の中から一番小さいゆっくりを探し出す。 小さいのは他のに潰されたりしてたので、なかなか探すのが大変だった。 「あっ! そこの隅っこに三匹いる黒い帽子の奴で頼むよ。一番小さいのを一匹ね」 「赤まりさか。まだ生き残っていたんだな」 「また名前が付いてるのか。ゆっくりって便利だなぁ」 「昨日説明しただろ! これは種類で──」 友人の説明を右の耳から左の耳に聞き流す。 種類も名前も大差ないじゃないか。 どうせ僕はこの黒い帽子のをまりさと呼ぶんだし。 「じゃあ、そのまりさとやらを買うよ。100円で良いんだよね?」 「小さいから50円でいいよ。何ならもう一匹赤まりさを買っておくか?」 「いや、同じのが二匹いると、名前を呼ぶとき面倒そうだからいい」 友人に50円を渡しながら、まりさをエコバッグの中に詰め込む。 まりさが何か言っていたが、家につくまで我慢してもらうとしよう。 僕はゆっくりとの生活に夢を馳せながら、るんるん気分で帰路についた。 「ふぅ、やっと家についたよ。さぁ、まりさ、ここで一緒に暮らそうね」 「………」 「あれ?」 バッグを開けたのに、まりさの返事がない。 それどころか姿もない。 不審に思った僕は、エコバッグをひっくり返し、中身を床にブチまけた。 1.5リットルのペットボトルが2本。冷凍チャーハンが2袋。サンマの缶詰が5個。潰れた饅頭が1個。 帰りにスーパーで買った品物しかない。 いや、待て待て。潰れた饅頭は買った覚えが無い。 よく見るとソレがまりさだった。 何たる不覚。 家に帰って5分どころか、家につく前に殺してしまった。 しかも殺した記憶すらない。 僕は大きくため息をつき、また明日、新しいゆっくりを買いに行く事にした。 「いやぁ、小さすぎるのも問題ありだね」 「俺はお前が問題ありな気がするよ」 友人が失礼な事を言ったが、軽く聞き流しておく。 さっさと次のゆっくりを決めなければならない。 こっちは忙しいのだ。 「今日は中くらいの奴にしとこうかなぁ? でも、赤いのと黒いのばっかだしなぁ」 「お前、本当にゆっくりが飼いたいんだよな?」 「もちろんだよ! あ、この紫の帽子の奴くれよ!」 「ぱちゅりーか。何でこいつを選んだんだ?」 「一番数が少なかったから」 「ああ、そう」 僕は友人に100円を渡し、嬉々としてエコバッグの口を開く。 「ちょっと待て。今日はこのレジ袋をサービスでやるから、これにいれて帰れ」 「地球の環境考えろよ」 「いいから! いいから!」 「むきゅぅ、なんだかここはせまいわ」 「ほら、なんか文句言ってるし。やっぱりエコバッグの方が」 「いいから! ぱちゅりーはこの本を読んでてね!」 「むきゅ! これはきょうみぶかいほうこくしょなのよ!」 「スーパーのチラシじゃん、それ。キャベツがすごく安かったよ」 「いいから、帰れよ!」 追い出されるようにペットショップを後にし、僕はスキップしながら帰路についた。 レジ袋の中でぱちゅりーも、むきゅぅむきゅうぅと喜んでいた。 「ふぅ、やっと家についたよ。さぁ、ぱちゅりー、ここで一緒に暮らそうね」 「む、むっきゅぅ……」 「ぱ、ぱちゅりいいいぃいいいい!!」 レジ袋の中のぱちゅりーはぐったりし、今にも死んでしまいそうだ。 ヤバイ。最短記録を更新してしまう。ヤバイ。 あれ? でも昨日の赤ゆっくりは家につく前に死んでたから、あれが最短になるのだろうか? 思わず考え込んでしまいそうになったが、今はぱちゅりーを助けるのが先決だ。 僕は対処法を聞きだすため、友人に電話をかけた。 「あっ、僕僕、僕だけど」 「なんだよ。もう殺したのかよ」 「酷い事言う奴だな。まだ死んでないよ」 「じゃあ何だよ!」 「それがさぁ、死んでないけど、今にも死にそうなんだよねぇ」 「どうやったらそうなるんだよ! このゆっくりキラーが!」 「失礼な。元はと言えば、お前がエコバッグに入れなかったせいだろ」 「いや、それ絶対に関係ないし!」 「あー、まぁいいや。ところでさぁ、死にそうなゆっくりってどうすればいいの?」 「具体的には、どう死にそうなんだよ?」 「なんかぐったりしてる。お前んちのポチくらいヤバイ」 「ポチは元気だよ! オレンジジュースでもかけとけ! あと死ね!」 切られた。気の短い奴だ。 まぁ、対処法は聞けたのだから良しとしよう。 さてと、それじゃさっそくオレンジジュースでも買いに── 「し、死んでる!」 ぱちゅりーは電話の最中に死んでしまったようだ。 こっちの気も短かったらしい。 僕は大きくため息をつき、また明日、新しいゆっくりを買いに行く事にした。 「ふぅ……やっぱり生物を飼うのって大変だよね」 「お前が言うと違和感があるけど、まぁそうだよな」 「わかるよー、わかるよー」 「おっ、なんかこのゆっくりが俺の気持ちを解るらしい。今日はこいつにしようかな」 「今日の犠牲者はちぇんか」 「犠牲者って言うなよ! 僕はゆっくりが飼いたいんだよ!」 「わかるよー、わかるよー」 「良いゆっくりだなぁ。よし、こいつに決めた! はい100円」 「さよなら、ちぇん」 友人の差し出すレジ袋をお断りし、エコバッグにちぇんを詰める。 わからないらしいが、お家に着くまでの辛抱だ。頑張ってくれ。 僕はゆっくりとの生活に夢を馳せながら、るんるん気分で帰路についた。 「ふぅ、やっと家についたよ。さぁ、ちぇん、ここで一緒に暮らそうね」 「わから……わかるよー!」 おっ、今回は何だか上手くいきそうだ。 嬉しくなった僕は、ちぇんと一緒に酒を飲む事にした。 今日は無礼講だ。朝まで飲むぞ! 「でさー、最初に買ったソフトがアトランチスの謎だったわけよ」 「わかるよー、わかるよー」 「ん~? 本当に解ってるのか? あのゲームはすごいんだぞー」 僕は不条理なゲームについて、ちぇんと熱く語りあった。 ちぇんは僕の話にわかるよーと相槌を打ってくれる。 モアイと758の関連性について語り合ったとき、僕はちぇんとなら上手くやっていけると確信した。 「そっかー、わかるのかー。ちぇんは良い奴だなー」 「わかるよー」 「あれ? お前、ぜんぜん飲んでないじゃん。ほら、ぐっと飲みなよ」 「わ、わからないよー!」 「酒の味が解らないなんて、ちぇんはまだまだ子供だなー」 「わからな……いよ……」 「ほらほら、ぐっとぐっと!」 「わか……ら……ない……よ……」 翌朝、目が覚めると、二日酔いで頭が痛かった。 ちぇんも二日酔いなのだろうか。何だかぐったりとしている。 いや、もう自分を騙すのはよそう。 ちぇんは酒に飲まれて死んでいた。 今日もペットショップに行かなくてはならない。 「まぁ、だんだん長くなってるから大丈夫だよね」 「1年飼えるようになるまでに、何匹殺すつもりなんだよ!」 「失敬な。殺す気なんてないよ。うっかり殺してるだけだよ」 「わからないよ!」 「何だよ、お前ちぇんかよ。あ、そうだ。このさい、喋らないゆっくりはいないの?」 「もうお前、犬とか飼えよ……」 「うちはペット禁止のアパートなんだよ!」 ゆっくりも大差ない気がしたが、逆ギレしてしまった以上引くわけにはいかない。 「昨日のちぇんはさ、何か上手く行きそうだったんだよね。あんな感じ奴で頼むよ」 「あー、じゃあこれにしろよ」 「これ?」 「ちーんぽ!」 僕は頭がクラクラしてきた。 なんて卑猥な奴なんだろう。 「え? なにこれ? 名前はちんぽ?」 「これはみょんって言うんだ。でも正式名称は──」 「うん、みょんね! なんかちぇんと名前の響きも似てて良い感じだよ!」 「人の話聞けよ。だからお前はダメなんだよ」 友人が何か言っていたが、僕はもうみょんに夢中だった。 友人に100円玉を握らせ、みょんを片手に帰路へつく。 みょんもちんぽちんぽと大はしゃぎだ。 途中、警官に職質されたけど、ゆっくりを飼える喜びで乗り切った。 「ふぅ、やっと家についたよ。さぁ、みょん、ここで一緒に暮らそうね」 「ペニスッ!」 こうして僕とみょんの生活が始まった。 湯上りで素っ裸の僕をみて、ビッグマラペニスッ! と言ってくれるみょん。 朝の生理現象中の僕をみて、ビッグマラペニスッ! と言ってくれるみょん。 トイレで用を足してる僕をみて、ビッグマラペニスッ! と言ってくれるみょん。 何となく全裸になった僕をみて、ビッグマラペニスッ! と言ってくれるみょん。 みょんは最高だった。 そんな僕とみょんの生活は実に3ヶ月にも及んだ。 しかし、最近みょんの様子が少しおかしい。 まらまらと何だか寂しげだ。 そろそろ、ゆっくりのお友達が欲しいのかも知れない。 ゆっくりを飼うのに馴れてきた気がしいないでもない僕は、みょんのためにもう一匹ゆっくりを飼う事にした。 「というわけで、買いに来たよ」 「急にそう言われてもなぁ。野良ゆっくりって今、一匹しか残ってないんだよ」 「えー、あんなにいたのに?」 「誰かと違って、大量に買ってくれたお客様がいらっしゃったんだよ」 「僕も何匹か買っただろ。一匹ずつだったけどさ。とりあえず残ってるの見せてよ」 「せっかくだから調教済みの買わないか? 今ならこのれいむが5万──」 「部屋こっちだったよね? 先に入るよ」 僕は守銭奴の友人を残し、ズカズカと店の奥へ進んだ。 部屋の中には一匹のゆっくりを残し、ガラ空きの水槽が並んでいた。 残っていたゆっくりは、黄色い髪に赤いカチューシャをしている。なんか地味だ。 「これ何て名前なの?」 「これはありすって言うんだ。後、名前じゃなくて種類な」 「やっと、とかいはのわたしをむかえにきたのね! おそいわよ!」 「初対面なのに怒られるし。どんな都会派だよ」 「本人が言ってるんだから、都会派なんだろ」 「そっかー、まぁ他に選択肢もないしこれにするよ」 「そういえば向こうに3万円の調教済みまりさがいるんだけど」 「はい100円」 友人のポケットに100円玉を押し込み、ありすをエコバッグに押し込む。 ありすは最初嫌がっていたが、これは都会派なバッグなんだよと教えると、喜んで中に入ってくれた。 なかなか物分りの良い奴だ。僕はあまりの嬉しさに、バッグをブンブン振り回しながら帰路についた。 「ただいまー、みょん」 「ちーんぽ!」 「今日はみょんにお友達を連れてきたぞー。ほらありす、みょんに挨拶して」 「ん、ん、んほおおおおぉおおおおお!! みょんかわいいわぁぁあああ!! ありすのとかいはのてくで、めろめろにしてあげるうぅううう!!」 「ちんぽおおぉおおおおおおお!?」 結論から言うと、みょんにお友達は出来なかった。 ありすが到着早々その性欲を全開にし、僕のかかと落としを食らったためだ。 だが、みょんに家族が出来た。 僕のかかと落しが炸裂する前に、みょんの中に新しい命が宿っていたのだ。 今日も部屋からは、ちんぽちんぽの大合唱が聞こえる。 僕はゆっくりを飼う事ができた。 みょんには家族ができた。 もうため息をついて新しいゆっくりを買いに行く事はないだろう。 おわり ■書いたもの 餡れいざー ゆっくりサファリパーク 赤ゆっくり物語 潜入ゆっくりの巣24時 ゆっくり昼メロ このSSに感想を付ける
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前書き このお話は現実世界にゆっくりが出現したような世界観で書かれています。 ゆっくりを飼い始めて1ヶ月ぐらいだろうか。 留守中にどこからか入り込り込んだゆっくりが布団で寝ていたときは驚いたが、 急いで台所を確認するがあらされた様子はない。 インスタント食品ばかりでゆっくりが食べられるようなものが無かったのが幸いした。 帰ってきた俺の気配に気づいたゆっくりが目を覚ます? 「・・ゆ?おじさんだーれ?ゆっくりできるひと?」 お決まりの台詞だ。 「ちらかってるし、ごはんもないけど、ゆっくりしていってね!」 確かに散らかっているが、お前が言う事じゃない。 起きたゆっくりがおもむろに動き出す。 「ゆ!」 ドーンと体当たりすると積んでいた漫画や雑誌の山が崩れだす。 ゆっくりはあたりをキョロキョロと何かを探しているようだった。 「ゆー、やっぱりごはんがないよ。」 「おじさん、ここはあんまりゆっくりできないところだから、 べつのところでゆっくりしたほうがいいよ!」 そう言うと今度は脱ぎっぱなしの洋服をくわえブンブンと振り回し始める。。 「おい!やめろ!」 あせって、ゆっくりを掴み取る。 「ゆ、ゆっくりはなしてね!れいむはおなかがすいたの!ごはんがないとゆっくりできないよ!」 「お前、お腹すいているのか?」 「すいてるよ!ゆっくりなにかたべさせてね!」 「あ、ああ、なにか食べさせてやるよ」 先に言われてしまったが、とりあえず何か食べさせてみよう。 冷蔵庫をあけ探してみるが、自炊などしないのでろくな物が無い。 「ああ、これなんていいかな。」 手にした食べ物をゆっくりに差し出す。 「ゆっくりたべさせてね!」 そう言ってゆっくりは口を大きく広げる。 こいつのあごの間接はどうなっているんだろうか。 「・・・・・・」 しらばらくそのままにしてみると、ゆっくりのまん丸な目がこちらを向く。 その目が徐々に早くしろよと言いたげなふてぶてしい物になる。 いいかげんに口に入れてやると、むしゃむしゃと幸せそうに味わいだす。 「うまいか?」 俺の問いかけに無言で口をあける。 「うまいか?」 もう一度聞くとさっきと同じような目をこちらに向ける。 俺が用意したご飯を食べ終えたゆっくりは窓際の日光がさしている所まで行き昼寝を始めた。 満足したのだろう。カビの沸いた蜜柑でもおいしいようだ。 それから今日までゆっくりは俺の生ごみ処理機として暮らしてきた。 もっとも、与えるのはカップメンの残り汁やまずくて食べられなかったコンビニの新商品ぐらいだった。 おなかがすいたと不満を漏らす事もあったが、目をつぶらせオレンジジュースと偽り水を流し込めばそれで満足していた。 さすがにおにぎりの包み紙や弁当の容器は食べられないようだが、小さいものであれば無理矢理の飲ませることもできる。 使用済みの丸めたティッシュやお菓子用の小さい包装紙はゴミとして出す必要がなくなった。 ゆっくりを飼ってから最初の冬を迎える。 家にはエアコンやファンヒーターといった都会派な暖房器具は無い。 暖をとるには一人用のコタツしかない。 昼間、日光がさしている時はそうでもないが夜になるとコタツ無しではいられない。 今夜もいつもの様に冷えてきた。 「さむいよ!ゆっくりさせてね!」 そういってコタツに入ろうとするゆっくり、 しかし、一人用のコタツは俺の足だけでいっぱいでゆっくりが入るスペースは無かった。 コタツ布団をもぐるだけでならスペースはあるが、 ゆっくりは真ん中のヒーターの下に移動しようとグイグイと押してくる。 かかとを落とすと静かになるのでそのまま蹴り出す。 そうすると静かになるので、そのまま蹴り出す。 ある日、帰ってくるとゆっくりの姿が見当たらない。 寒い外から帰って来た俺にはそんな事よりコタツが先だった。 カバンを置いてイソイソとコタツにもぐりこむ。 ああ、暖かい。ここが俺の桃源郷、体が温まるまでここでしばらくゆっくりしよう。 だが、待てよ。小さい一人用のコタツでもこんなに早く暖かくなるだろうか。 スイッチを切り忘れたか?いや、出かける前に切った記憶はある。 それに、なんだろう?このあったかいぷにぷにした物体は・・・。 コタツの中をみるとゆっくりがいた。 まさか、こいつが勝手にスイッチを入れたのだろうか・・・。 「ゆ?おじさん、おかえり!おなかすいたよ!ごはんまだ?」 「うるさい!おまえは出ろ!」 「ゆぐ!」 ゆっくりをコタツからけり出すと、ピョンピョン跳ねながら怒りをあらわにした。 「そこはれいむのゆっくりぽいんとだよ!おじさんはでてってね!」 「そんなにゆっくりしたいなら、おそとでゆっくりするよいいよ!」 「ゆっくりできないひととはいっしょにいられないよ!とっととでてってね!」 「そうか、おまえあったかい所でゆっくりしたいんだな・・・。」 「そうだよ!だからおじさんはでてってね!」 「ゆっくりするならもっといいところがあるよ。」 「ゆ?いいところ?だったらはやくあんないしてね!」 俺はコンロに鍋を置きその中にゆっくりを入れ蓋をしめる。 「ゆ!くらいよ!ここどこ!」 「おのれ謀ったなゆかり!だがこれで勝ったと思うな!」 「人の世に闇がある限り私は何度でも蘇る!」 「せいぜいその時まで・・・」 「ゆっくりしていってね!!!」 途中から訳のわからないことを喚きだすが、無視して火をつける。 火をつけて3分・・・・ 「ゆ?あったかくなってきたよ!ゆっくりできるよ!」 火をつけて5分・・・・ 「ゆふーzzZ・・・ゆふーzzZ・・・」 火をつけて10分・・・・ 「ゆ?あっあつよ!!ここどこ!ゆっくりだしてね!!!」 火をつけて15分・・・・ 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!あ”つ”い”-!!た”し”て”ー!!こ”こ”か”ら”た”し”て”ー!!!!」 「お”し”さ”ん”た”す”け”て”ー!!あ”つ”い”よ”ーー!!!!」 助けを求めてきたところで蓋をあける。 暑さに震えているゆっくりだが、俺の顔を見るといくらか安堵した顔をみせる。 「あ”あ”あ”・・・、お”し”さ”ん”た”す”け”て”・・・」 俺は鍋一杯になるまで水を入れてやる。鍋の温度は下がり水はぬるま湯になった。 ゆっくりはぬるま湯につかって気持ちよさそうにしていた。 「出してやろうか?」 「ゆ?もうちょっとここでゆっくりするよ!あとでだしてね!!」 「そうか、じゃあここでゆっくりしね」 「うん!ゆっくりしてるよ!!」 鍋に再び蓋をする。ゆっくりがまた何か言っているが気にせず蓋に重しを乗せておく。 10分ぐらい足っただろうか。 「おじさん!だして!そろそろだしてね!」 「はやくだして!ださないとゆっくりさせてあげないよ!」 「ゆ!ゆぐ!からだがとけるよ!はやぐたすけで!!」 いつの間にか静かになっていた。 時計を見ると水を入れてから30分ぐらいだ。 俺が静かになった鍋の蓋をあけるとそこには・・・・ Fin 後書き どうみてもお汁粉です。本当にありがとうございました。 設定として必要ないのですが、登場したゆっくりは一応霊夢です。
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ゆっくりの逃避行 丁 といいつつ途中から人間視点も入るよ! ゆっくりいじめ系1766 ゆっくりの逃避行 丙 の続き 比較的ゲスなゆっくり 比較的善良なゆっくり 賢いゆっくりは漢字を使います 俺設定あり 逃亡開始四日目 ぱちゅりー達が目覚めた時、まだ日は昇っていなかった。 東の空を見てもまだ日は昇ってくる気配はない。朝までもう一眠りしようと思ったとき、件のちぇんが 「いやなよかんがするよー!よくわからないけどはやくにげたほうがよさそうだよー!!」 ちぇんは大きな“耳”があるためか、かすかな音などから危険を察知する能力を持つことがあると言われている。 「むきゅ、またなの!?で、でもまだ真っ暗よ!?」 ぱちゅりーはあたりを見回したが、何も分からない。 「と、とにかくはやくにげるべきだよー!」 ちぇんは再度急かす。 仕方なくぱちゅりーはまだ眠っている40匹ほどのゆっくりを全て起こさせて出発することを告げた。 「まだねむいよ!ぜんぜんゆっくりできてないよ!!」 「おちびちゃんがいるんだよ!?ゆっくりやすまないとしんじゃうよ!!」 「わたしたちはきのうあれだけはしってつかれてるのよ!?」 当然の如くゆっくり達は猛反発する、数匹はそのまま二度寝してしまった。 ぱちゅりー自身もちぇんの言うことに半信半疑ではあった。だが昨日のような事態は未然に防がなくてはならない。 「とにかく出発するわ!寝てたらどうなるかわからないわよ!!」 寝ているゆっくり達は放っておいて出発してしまった。 しばらく歩いたとき、遥か後方から何か聞こえてきた。 遠すぎて何かはよく分からないが、ただ事ではなさそうだった。 森の入り口 その時森の入り口では大勢の男たちが集まっていた。 「私が今回のゆっくり駆除の責任者を任された鬼意だ。今日集まってくれた諸君らに感謝する。 さて、本日の作戦は昨日説明した通りだが、何か質問のある者は?」 すると一人の若い男が、 「失礼、終了時刻は何時でしたか?昨日聞き逃してしまいまして・・・」 と質問した。 「卯の刻(午前6時頃)から酉の刻(午後6時頃)まで、辺りが暗くなる前に森の入り口まで戻って来ること。他に何かある者は?」 今度は皆黙って鬼意の方を向いている。 「それでは間もなく作戦開始の時刻だ、諸君、今日こそ憎きゆっくりどもとの闘争に終止符を打とうではないか!!」 「「「オオオオーーーーッ!!!!」」」 男達は手斧や鍬、猟銃など様々な武器を携えて森に入って行った。 森に入ると3人ずつほどの班に分かれた、その後は班毎に課せられたノルマの数だけゆっくりを狩りつくす計画だ。 ある班は森の入り口付近で木の洞に棲むゆっくりのつがいを見つけた。 殺し方については特に制約はない。ただ逃がしてはいけない、それだけだった。 だが開始早々ゆっくり達に大声を上げさせて他に気づかれては不味い。 ゆぅゆぅと幸せそうな寝息を立てて寝ているれいむとまりさ。 さてどうやって殺そうかと一人の男が思案していると別の男がさっさと手持ちの鍬で二匹まとめて一刀両断にしてしまった。 「「ゆ゛ぎぇ・・・?」」 「オイ!コイツらは俺が殺そうと思ったのに!!」 遅れた男は悔しそうに殺した男に抗議する。 そしてまた別の場所では土を掘っただけの簡素な巣で眠るちぇんを見つけた。 「ヒャッハー!俺様の獲物だァー!!」 ハイになった男はちぇんを穴から引きずり出す。 「わ・・・わからないよー!!おにいさん、ちぇんをゆっくりいじめないでね!!」 怯えるちぇんの懇願を無視し、男はちぇんの尻尾を掴んで、サンドバックのように殴り始めた。 「ゆ、ゆっぐり・・・やめて・・ね!・・!」 一分ほど殴り続けていたが終いにはちぇんの尻尾が千切れてしまったため、ちぇんはそのまま吹っ飛んでしまった。 「ゆげぇ・・!ちぇ・・ちぇんのしっぽがあああ!!わからないよおお!!!」 男は興ざめだとでも言うような顔でこん棒で地面に叩きつけられたちぇんを叩き潰してしまった。 「ったく・・・モロすぎて全然楽しめねぇっての!次はもっと歯応えのある獲物を探そうぜ。」 「オウ!」 と男達は話しながら去って行った。 しばらく経つと森のあちらこちらで里の男達による虐殺ともいえるゆっくり狩りが本格化してきた。 逃げまどうゆっくり達を尻目に、娯楽の道具として虐待する者も大勢いた。 「ゆ、ゆっくりにげるよ!」 「やめてね!ゆっくりついてこないでね!!」 「ほれほれ、どーした?このままじゃ追いつかれちまうぞ!?」 「あっちいってね!ついてこないでね!」 「ハイ残念!捕まったキミは罰ゲームを受けないとな!」 男はニヤニヤ笑いながら捕まえたれいむのリボンを奪った。 「ゆ!?やめてね!れいむのゆっくりしたおりぼんさんはやくかえしてね!!」 リボンを放り投げると次は髪を全て毟ってしまった。 「でいぶのきれいなかみがあああああああ!!!」 男は毟り終えるとれいむを放してやり、早速次の獲物を探し始めた。 「よく頑張ったね!れいむはもう群れに戻ってみんなとゆっくりしていっていいよ!」 「ぶざげるなあああああ!!でいぶのがびどげどおでぃぼんざんがえぜえええええ!!!」 男は足に体当たりを繰り返す禿饅頭となったれいむを放っておいてまりさを探し始めた。 「さーてまりさはどこかなー?おやおやーァ?あそこの木の洞に何かいるなぁ?」 その後まりさがれいむと同じ運命を辿るのに長くはかからなかった。 「「でいぶ(ばりざ)のおでぃぼん(おぼうじ)がえぜえええええええ!!!」 ある場所では辺り一面に様々なゆっくり達のデスマスクが散らばっている。 かつてゆっくりの大規模な群れの中心的役割を果たしていたここでも惨劇(?)は繰り広げられていた。 「やべでええええええ!!もうずっぎりじだぐないいいいいいいいいいいい!!!」 「んっほおおおおおおお!!すっきりぃぃいいいいいいいいいいいぃ!!!」 別の場所ではレイパーありすと思しきありすをつかってゆっくりを強制妊娠させて遊ぶ男達がいた。 この男達は武器を持たずに2l入りのオレンジジュースを何本も抱えて森に入った。 「はいはい、すっきりー!っと・・・」 一人の男は手際よくタチのありすを小刻みに震えさせ、もう一人の男が絶えずオレンジジュースをネコのれいむに補給させ続ける。 そしてもう一人の男が成長の早い赤ゆっくりと茎をまとめて麻袋に放りこんでいく。 増やした赤ゆっくりを加工所に売ろうという魂胆だ。 勿論、麻袋に鮨詰めにされる赤ゆっくりの死亡率の高さを考慮して、数で補うため大量に産ませているのだ。 「「すっきりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」」 早くもれいむの頭から茎が伸び始めた。 オレンジジュースを絶えず補給し続けるため赤ゆっくりの成長も通常とは比較にならないほど早い。 「ゆぅ・・・れいむのあかちゃん・・・ゆっくりしていってね・・・」 れいむはもう何回も強制的に産ませられたことも忘れて赤ちゃんを見上げて感慨に浸っている。 「「ゆ・・・ゆっきゅいしちぇい・・・」」 早くも産声を上げ始めた赤ゆっくりを容赦なく麻袋に放り込む。 「・・・!・・・!」 麻袋の中では何やらうめき声が聞こえるが、男達は無慈悲に作業を続ける。 「やべてえええええ!!!あがじゃんをもってがないでえええええええ!!!!」 親れいむが抗議の声を上げるが、再びありすとの交尾を始めさせた。 「これいじょうすっきりしたらしんじゃうよおおおおおお!!ありずもめをざまじでええええええええ!!!」 れいむはありすに呼びかける。元はつがいだったのだろうか。 だがありすの紅潮し切った頬、血走った目を見る限り目を覚ますようには見えない。 日の暮れるまで産ませ続ければ結構な数になるだろう。 既に太陽が南中した頃だろうか。 また別の男達が森のかなり奥の方を進んでいた。 「さて、結構奥まで来たな。」 「他の連中が入らない所まで来たらゆっくりもいると思ったが・・・」 「大外れじゃないか。他の奴らもいないがゆっくりもいねぇ!」 ゆっくりを求めて森の奥まで入ってきたが宛てが外れたようだった。 「それにしても暑いな・・・」 一人の男が呟いた。 「それよりもいい加減腹が減った、ゆっくりをおびき寄せるために握り飯を使ったのが間違いだった・・・」 「全くだ・・・ゆっくりもいないし、昼飯もないとは・・・ん?」 ある一人が大きな木の下で眠りこけていた数匹のゆっくりを見つけた。 「おいおい、なんつータイミングだ・・・!」 男達は忍び足でゆっくりに近づいた。 様子を窺うとどうやられいむが二匹、子れいむが三匹、そしてありす一匹いるようだ。 ゆっくりの構成を見て親子のようには見えないが、空腹の男達にとってそんなことはどうでもよかった。 余談ではあるが、明朝に寝過ごしてぱちゅりー達から見捨てられた例のゆっくり達である。 「丁度いい、一人二匹ずつ食えるぞ。」 「朝から歩き通しだからな・・・助かったぜ。」 そんなやり取りをしている内にゆっくり達が目を覚ましてしまった。 「ゆゆっ!?にんげん!!!???」 「にんげんさんはゆっくりできないよ!!おちびちゃん、はやくおきてね!!」 「に、にんげん!?にんげんはぜんぜんとかいはじゃないわああああ!!!」 気付かれてしまった、しかも相手も人間に対する警戒心は高いようだ。 早朝からあれだけ同族が物言わぬ餡子になったのだから無理もないと男達は思った。 男達は逃げようとしているゆっくり達の先に回り込みあっという間に捕えてしまった。 「やめてね!れいむたちはわるいゆっくりじゃないよ!!」 男達は気にするそぶりも見せずに何やら話し始めた。 「おい、ライター持ってるか?」 「俺は煙草吸わねぇから持ってないな・・・どうしようってんだい?」 持っていないと答えた男は尋ねた。 「いや、折角生捕ったゆっくりどもに逃げられたら堪らんからな。」 「オイ、ライターなら俺が持ってるぞ、ホレ。」 やや年長らしき男がライターを手渡した。 「おお、流石。それじゃ早速・・・」 ライターを受け取った男は早速一匹のれいむを持ち上げ足に当たる部分をライターで炙り始めた。 「やめてね!!あんよがあついよ!!そんなことしたらあるけなくなっちゃうよ!!」 「やめてあげなさいよ!ゆっくりできないわ!!」 そうこうしている内にれいむの足がこんがりきつね色に焼きあがった。 「まだ焼き足らないんじゃないか?消し炭くらいどす黒く焼くものだと聞いたが・・・」 「あついよ・・・れいむの・・・きれいなあんよが・・・・」 男は二匹目を持ち上げてライターで炙りながら答えた。 「虐待目的ならそれでいいが、こいつらを食うんなら炭になるまで焼いたら勿体ないだろ。」 「はなしなさいよ!あついのはとかいはじゃないわ!!・・・・ゆぎゃああああああ・・・!!」 しばらくすると辺りには餡子とクリームが焼けた甘い香りが漂っていた。 足の焼けたゆっくり達は完全に焼かれたわけではなかったので、まだ動くことはできたが、満足に動くことは叶わなかった。 「ゆあああああん!!あんよがいたいよおおおおおおおお!!!」 「いちゃいよおおおお!!みゃみゃあああああ!!!」 「いなかもののくせにありすたちになんてことするのよ!!しんしならせきにんとりなさいよ!!」 ゆっくり達は足をこんがり焼かれた苦痛に喚いているが男達は既に昼食の準備を進めていた。 「ゆっくりも見つかって昼飯も食えて一石二鳥じゃないか、相変わらず便利なナマモノだ。」 ゆっくり達は何やら喚き散らしているが一匹の子れいむが男達が話している隙に逃げだそうとしていた。 「しょろーり、しょろーり・・・」 だが足を焼かれ移動も遅かった上に、悲しいかな、擬音をわざわざ口に出してしまう習性のせいで見つかってしまった。 「おおっと、そうはイカのキ○タマだ。」 「逃げられる前に食べようか、もう腹が減って仕方がねぇな。」 「そうしよう、逃げられたら元も子もない。」 男達はそれぞれゆっくりを手に取って頬張り始めた。 全員腹が減っていたためか、子れいむより大きいゆっくりの方から手を付けた。 「ゆぎぇ・・・・・ゆっくりたべないで・・・・ね・・・!・!」 「・・・・とか・・・は・・・じゃな・・・い・・・・」 ゆっくり達が断末魔を上げながら男達に喰われているのを見て、赤れいむ達は餡子を吐いて気絶してしまったようだ。 それを見た一人が呟く。 「勿体ねぇなァ・・・吐くんじゃねぇよ・・・」 やがて大ゆっくりを平らげた男達は子れいむ達も掴み上げて食べ始めた。 「ゆ・・・ゆっ・・・・」 最早痙攣するだけの子れいむであったが男達には知れたことではなかった。 「いやぁー満腹満腹、中々餡子がいい具合に火が通ってた。」 「腹が減ってたからな、甘い物があって助かったぜ、本当に。」 男達はゆっくりを全て平らげるとそそくさと来た道を帰って行った。 森の奥まで来てしまったので、早く帰らねば日が暮れてしまいかねないからだ。 夕刻・ぱちゅりー一行 ぱちゅりー達は間一髪で難を逃れたが、まだ油断はできなかった。 とにかく少しでも遠く離れる必要がある。 既に日も暮れかかっていた。人間も流石に夜の森で山狩りを続けることはないだろうが、 人間が動けない時間帯はゆっくりにとっても同様に危険である。 日が暮れて辺りが薄暗くなった頃にようやくぱちゅりー達は一息つくことができた。 既に皆満身創痍である、帽子や装飾具は薄汚れ、体中傷だらけになっていた。 他のゆっくりに助けられたぱちゅりーはかろうじて無事だったが、昨日の騒動で傷ついたゆっくり達は数匹脱落していた。 また次の日はもう動けそうもないゆっくり達もいる。 「むきゅ・・・仕方ないわ・・・でも今は動けないゆっくりのペースにあわせる余裕はないわ・・・」 ぱちゅりーがそう言うと傷ついて息絶え絶えのゆっくり達は力を振り絞って抗議する。 「そんだのひどいよお!・・・ぱじゅりいいいい!!」 「おでがいだがらばりさたちをおいてがないでねえええ!!!」 その様子を見てかのちぇんとれいむも不信感を顕わにしている。 「わからないよー・・・みんなぱちゅりーたちを信じてついてきてるんだよー・・・」 「そうだよ、みすてるなんてみんながかわいそうだよ!」 そして二匹はぱちゅりーの非情な決断に抗議する。 他のゆっくり達からも非難轟々・・・ぱちゅりーは説得を試みたが収まりそうもない。 群れの瓦解という危険な事態を避けるために已む無く撤回し、その場は収めた。 少し安心したゆっくり達はようやく休み始めた。 「まずいわ・・・」 ぱちゅりーだけはゆっくり出来る筈もなく頭(?)を抱えるしかなかった。 既にゆっくり達の足並みにはズレが生じ始めていた。 まず第一、ゆっくり達はぱちゅりーだけでなく、つがいであったまりさを慕ってついて来た者も多い。 既にまりさはいない。そのため自分たちがぱちゅりーについていく理由を失った者も少なくはない。 そして第二、先ほどの光景のようなぱちゅりーが普段見せない非情さを垣間見てしまったこと。 このまま群れに留まっていては人間がやってくると言われて群れを離れる決断をした者は当然多い。 しかし、ぱちゅりーについて行ってもこのまま自分が見捨てられるかもしれないと思い始めたのだ。 言いかえれば求心力の低下と言えなくもない。 そして第三、悲しいかな、単純にゆっくり達の士気が下がっていた。 相次ぐ非常事態と、仲間の脱落、蓄積した疲労はゆっくり達の士気と体力を容赦なく下げる。 既に集団の維持は限界に近い。 逃亡開始五日目 早朝から騒々しく、同族の悲鳴が響き続けた昨日が嘘のように穏やかな朝だった。 空は青くどこまでも晴れ渡っている。だが、ゆっくり達の心境は決して明るい物ではなかった。 ゆっくり達は目を覚ますと動ける物が傷つき、動けない物に手を貸し、ゾロゾロと移動を開始した。 昼時に近づく頃には動けないゆっくりはどんどん脱落していった。 それでも歩みを止めるわけにはいかない、人間達が迫っている、早く森を出なければ、その恐怖感だけがゆっくり達の原動力だった。 だが実際の所、人間の山狩りは昨日の内に終了している。だがこのゆっくり達はそんなことを知る由もなかった。 森を進むゆっくり達の足取りは重く、表情も皆険しいままだった。 ゾロゾロと進むボロボロなゆっくりの集団を、森に棲む別のゆっくりが奇異の目で見つめていた。 普段は迫害対象とされるめーりんもただ黙ってニヤニヤと見ているだけである。 まるで「いいザマだ。」とでも言うかのように。 あるいは近くにいたきめぇ丸も、「おお、みじめみじめ・・・」とだけ言って飛び去って行った。 先導するぱちゅりー達もただ黙々と歩みを進めるだけである。 だが後続のゆっくり達は口々にボソボソと何か呟いているようだった。 「・・・ぱちゅりーのせいだ・・・」「・・・どうせにんげんさんなんてこないよ・・・」「・・・まりさがいれば・・・」 不安や不満の捌け口が、集団の指導者に向けられるのは当然の理だ。 ぱちゅりーにも何を言っているのか少しは聞こえてきたが、反論できなかった。 「ああ、自分がもっとちゃんとしていれば・・・」 「ひょっとしたらあの人間の言ったことはハッタリだったのかもしれない・・・」 「まりさがいてくれれば・・・」 自責の念や後悔がぱちゅりーに重くのしかかった。 隣にいた件のちぇんとれいむの二匹はそんなぱちゅりーの様子を見て慰めた。 「ぱちぇのきもちもわかるよー、でもひとりでかかえこむのはよくないよー!」 「そうだよ!ぱちゅりーだけのせきにんなんかじゃないよ!!」 ぱちゅりーは自分を支えてくれる二匹の大きさを改めて感じた。 そうだ、自分にはまだこの二人がいる。少し気持ちを持ち直したぱちゅりーはまた黙々と歩きはじめた。 その日は日が暮れた頃に手頃な洞穴を見つけたので、そこに宿することに決めた。 食糧は既に尽き、完全に自給自足状態だ。だが寝床さえあれば夜は安全に明かすことができる。 ぱちゅりー達はその洞穴を深く観察することもせずに入り眠りに就いた。 逃亡開始六日目 洞穴の中に朝日の光が差し込んで・・・こない。ぱちゅりー達はまだ日の昇る少し前に目覚めた。 「うー!あまあまがいっぱいあるんだどー♪」 予期せぬ闖入者によって。 「「「れみりゃだあああああああああああああ!!!!」」」 ゆっくり達はたちまち大パニックに陥った。 「む゛ぎゅうううう!!れみりゃよ゛おおぉぉぉぉぉぉお!!」 普段は落ち着いているぱちゅりーもその例に漏れない。 この洞穴は実はれみりゃの巣だったのだ。 夜行性の傾向が強いれみりゃが夕方から夜明けにかけて巣を留守にしていた。 その巣を空けている間にぱちゅりー達がそうとは知らずにそこで夜を明かしてしまったのだ。 れみりゃからしてみれば一晩中餌を捜し回って腹ぺこで帰ってきたら家には食料が鎮座していたことになる。 しかし当然ながらゆっくり達からしてみれば堪ったものではない。 ゆっくり達はワラワラと洞穴から抜け出そうとしたが、元々弱っている上に寝起きで動きが鈍かったため、たった一匹のれみりゃに何匹も捕まってしまった。 ある者は逃げ遅れ、ある者はれみりゃに踏みつけられ、またある者は他者に弾き飛ばされ洞穴に取り残された。 捕まってしまったゆっくり達の中にはリーダーのぱちゅりーもいた。 「む゛ぎゅうううう!!誰かだずげでえええええええ!!!」 最早普段の知性や冷静さは完全に生存本能に置き換わっていた。 れみりゃに捕まれたぱちゅりーは洞穴の入口に逃れていた例のちぇんとれいむを視認した。 ぱちゅりーは痛みを堪えながら、必死に二匹に助けを求めた。 「ちぇええええん!でいぶううううう!!お願いだから助けてええええええ!!!」 だが、二匹は逃げ遂せた仲間たちと一緒にぱちゅりー達を見捨てたかのようにその場から離れてしまった。 「むぎゅ、待っで、置いでがないでえええええ!!」 つい先日あれほど自分が信頼していた仲間に裏切られたぱちゅりーはただ絶叫した。 「あまあまのくせにうるさいんだどー!おとなしくたべられるんだどー!」 「やべでぇえええええ!ゆぎぇえええぇぇぇ・・・」 結局れみりゃの束縛を逃れることもできず、一噛みで息絶えてしまった。 「うー・・・ぜんぜんはごたえがないんだどー!」 れみりゃは不満そうに言うと息絶えたぱちゅりーを放り投げ、他のゆっくりを賞味し始めた。 「うーあまあまだどー♪」 「「「ゆぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・ぁ!・!」」」 大凡一週間にも及ぶあるぱちゅりーの逃避行もここで終わってしまった。 仲間を助けようという一心で群れから多くのゆっくりを連れ、仲間に助けられてここまでたどり着いた。 そして、その最期も仲間に裏切られるという数奇な運命を辿ることとなったゆっくりは珍しい。 結論から言ってしまえば、かのぱちゅりー達の群れは先の山狩りで壊滅的な打撃を受けた。 つまりぱちゅりーの目測は正しく、少数ながらもゆっくりを救うことができたのだ。 さて、ありすの襲撃、山狩り、相次ぐ落伍、そしてれみりゃの襲撃(?)を生き延びた少数のゆっくり達はどうなったのだろうか。 最後まで残ったゆっくりは大凡10匹かそこらだ。 ちぇんとれいむもいる。この二匹はぱちゅりー達を裏切ったという自覚はなかった。 ただ、ゆっくり個々の生存本能に従っただけに過ぎない。 自らの生命を擲って他者を救うなどという殊勝なゆっくりは本当に稀だ。 ましてや血縁でもなければ、配偶者でもない“赤の他人”を救う義理などどこにもないのだ。 しかし、指導者を失ってしまったというのはゆっくり達にとって深刻な問題だった。 ぱちゅりーとまりさには一匹の子まりさがいたが、いつの間にやら脱落していた。 一匹の死になど構ってられる余裕がなかったことが改めて窺える。 とにかく生き残りをまとめるために、二匹が暫定的なリーダーとなった。 その日は結局野宿となった。 逃亡開始七日目 もう久しく穏やかな日々を過ごした記憶もない。 ゆっくり達は目覚めると、本能に従うままにゾロゾロと移動を始めた。 その日の夕方頃、ついに森を抜けた。 ゆっくり達からは歓喜の声が上がった。 「ゆっくりできる!」「たすかった!」「やっとたどりついた!」 だが、ここで一つの問題に直面した。 「森を抜けたところでどうなるのか?」 普通に考えれば、森から抜ければむしろ人間との遭遇率が飛躍的に上昇し、寧ろ危ないということはゆっくりにでも分かる。 しかし、集団を率いてきたぱちゅりーが森にいれば人間の山狩りに巻き込まれるという強迫観念に囚われて、 そんなごく当たり前のことすら欠如していたのだ。 運の悪いことに、相次ぐアクシデントに遭遇してしまい、それに気づく機会を得られなかった。 ここにきて再びゆっくり達はざわめき始めた。 ちぇんとれいむもどうすればいいのか分からなかった。 だが森に戻るという最も安全でリスクの少ない選択肢は始めからゆっくり達にはなかった。 既に、森は“ゆっくりできない場所”として餡子に刻み込まれてしまったからだ。 途方に暮れた二匹はふと辺りを見回すと、鬱蒼と広がる不気味な竹林が目に入った。 とにかくあそこへ行こうと提案するとゆっくり達は宛てもないため、渋々同意し、竹林に入って行った。 その数週間後 ゆっくり達の不安とは裏腹に、竹林は実にゆっくりできた。 目立った外敵もいなければそれほど奥に入ったわけでもないのに、人間にも全く遭遇しない。 いるとすればたまに見かける兎くらいなものだ。餌となる虫や草には困らない、まさしく理想郷のようだった。 10匹程度まで数を減らしたゆっくり達もその数週間の間に子供を産み、幾らか数が増えていた。 だが、ある日を境にゆっくり達はいつの間にか姿を消していた。 外敵はいない“筈”のこの竹林、生活には満足できていたことは間違いない。 そのゆっくり達がどうなったのか。それを知る者は誰もいない。 Fin 当初は勧善懲悪モノを書こうと思っていたものの、前編であっさり方向転換し、ぱちゅりー諸共全滅させることに。 そのため、結構書き方が一貫してなく、読み難くなって申し訳ありません・・・ 作品のコンセプトとしては、人間はあくまでもゆっくりを追い詰める一手段でしかないので、 自然淘汰、あるいは仲間割れ、ゆっくりのエゴを全面に押し出して書いたつもりです。 終わり方に関してはエピローグ的なものなので、どうなったかは読んだ人にお任せします。 次につながる物が何か得られればと思うので、感想・改善点等あれば是非お願いします。 過去作品 男と一家 きめぇ丸の恩返し 丙・丁 ゆっくりハザード 永遠亭の怪 楽園の終焉 感染拡大 内から侵食 ゆっくりの逃避行 丙 by同志ゆっくり小町